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謎だらけの港町

「どう見たって、あの子ですよ……ね」
エッザールが頭を抱えているのも無理はない。っていうかなんでこんな場所にチビがいるんだ。
それに……うん。俺のことを見て「フィンにいたん」って言ったし。間違いない。

とりあえず、頭の中を整理しないと。

俺とパチャとエッザール。そしてアスティさんと四人で村を出てほどなく、地震のような、地響きっぽい揺れがしたんだ。
地図で方角を調べていたアスティさんが言うには、パデイラの方からだって。なんでも以前怪物に街の人間が残らず一夜で食べられたとかで、以来廃墟と化したそこに近づく人はいなくなったって。だから俺たちも確認したくはなくって。怪物だなんて怖いし。
港町が近づくにつれ、海の匂いが風に乗ってやってきた。
「すてきな匂いだな」って、パチャは満面の笑みを見せていた。俺も初めて見る笑顔だ。パチャもこんな顔するんだなって。

さて、問題はここからだ。

バクアに入ってほどなく、どっかで見たことあるような馬車が停められていた。
エッザールと二人で「似てるよね」って。
特徴があるんだ。人間じゃなくラッシュみたいな大柄な獣人が入るために一回り大きく作られていて、それと決定的なのが、
「あの人の匂いがしますね」って。ちなみに人間であるアスティさんも馬車の中に入ってそう感じたって。なるほどラッシュの風呂入ってない独特の臭いがする。パチャ以外俺含め全員そう言ってるんだから間違いない。
しかしなんでこんな港町に……?
何か仕事の依頼でもきたのか、それともバカンスに来たのか理由はさまざま。けど腰の重いラッシュがわざわざこんなとこに来るっていうのも謎すぎるし。もしかして昨日のパデイラの地震も関係してたりとかね、なんて結局詮索せずに俺たちは料理が良さげな宿屋を探すことにした。が……

いまいち、街に活気がないんだよね。それに漁船も結構停泊してるの多いし。
「ああ、この2ヶ月あまり記録的な不漁でね。今までの半分も魚が獲れないんよ」
メニューを見るとなかなかのお値段。まあエッザールは大丈夫だとは言ってるけど、いっぱい食うのも控えておいた方が良さそうだな。
……………………
………………
…………
確かに魚料理は美味いけど……なんかしらけちゃった。
「悪いな……あたしが海が見たいって言ったせいで」向かいの席でパチャが申し訳なさそうに言う。けどしょうがないって、不漁だなんて誰も知らなかったんだし、それに……
「ラッシュさん探してみませんか?」と、アスティさんの提案。
「そーいや、あたしだけそのラッシュって人知らないンだよね。どういう奴なの?」

ということで、ファンを自称するアスティさんがラッシュのことを説明することとなった。
エッザールも俺もラッシュの武勇伝的なことはあまり知らなかったので、つい聞き入っちゃった。
「……と、そんな感じですね」
ふと前を見ると、パチャの目がキラキラ輝いてたんだ。
「す、すげえ……そこまで一騎当千の強え傭兵がいただなんて、それにあたしたちと同じ獣人だろ……!」
「会いたいんですか、パチャさん」
「ああ、そんな強くてかっこいいんならすぐにでも会いたい! つーか近くにいるってことだよね? だったら探そう!」

もしかしてパチャ、自分より強い人に憧れてる!?
「あれは、恋をしている目だ……」うんざり顔のエッザールはそっと俺に耳打ちした。

俺、いちおうパチャの結婚相手なんだけどな……
そんな中だった。
突然、俺の背後で聞き慣れた泣き声が。
「どうしたの……はぐれちゃったの? 名前いえるかな?」
店主のおばちゃんが必死になだめているその子ども。

「チビじゃね?」
「あ、ああ……間違いなくチビちゃんだ」
「ってことはやっぱり、ラッシュさんが近くに!?」

しかしなんでチビがこんな場所にひとりで!?
ずーっとラッシュと付かず離れずのチビが……どうして??

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