頼られても困る
高いところから落ちて死んだらしく、首が90度に直角に曲がっていた。
「ね、私が見えてるんでしょ、霊能力者さん、あなたのブログ読んだことあるけど、すごく幽霊に詳しいんでしょ、どうやったら、生きている人間を呪い殺せるか、教えてよ。死んだら、何も触れなくて、彼の前に立っても無視されるし、どうしたらいいの?」
「あのね、どうやって呪い殺せるかなんて、知るわけないでしょ、知ってても、呪いの手伝いなんて、できるわけないでしょ」
「そんな、あなたしか、私の声や姿が見えないんだから、助けてよ、お願い。あいつ、本当にひどい奴で、何股もして女泣かせて、私なんか、百万以上もあいつに金を貸したのに一銭も返してもらえずにあたしの方が先に死んで、あいつはのうのうと今も生きていて平気な顔で女をだましているのよ」
「はぁ、だから、どうしたって言うの、私には関係ないでしょ」
「とにかく、一度、あいつのこと調べてみてよ、きっとあなただって許せなくなるから」
私は、あまりにもしつこい幽霊の頼みを聞いて、一応、その問題の男に会ってみた。
女から金を借りて返さないという話が本当なら、調べて警察に突き出せば、彼女の気も少しは晴れるだろうと思っていた。聞いた想像とは違って、割とおとなしそうな男性で、とても何股するような男には見えず、警戒していたつもりだったが、彼との会話は楽しくて、気づくと私も彼にお金を渡していた。
幸い、彼女のように金を取られたまま死ぬことはなく、私は途中でハッと我に返り、彼にお金を返すように迫り、返さないと詐欺だと警察に訴えると口論し、そのはずみで、ついうっかり彼を殺してしまい、最近は、幽霊となった彼女と彼が、私の枕元で、喧嘩していた。