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魔剣ガルシウス

「良かったわ……意識が戻ったのね!」
泣きながら抱きつく彼女に驚きつつも話を聞くと、彼女は突然起こった眩しい光に目をくらませ、
気づいた時には見知らぬ部屋で目覚めたのだという。
呆然としているところで俺がこの部屋に入ってきたため、慌てて隠れたということだった。
そして今に至るのだという。
申し訳ない気持ちになりながら彼女に謝っているのだが、何故か彼女はますます泣くだけだったのだ。
俺が目覚めてから数週間の月日が流れたのだが、未だに元の世界に帰る方法は見つかっていないようで、途方に暮れていた。
そんな時、俺に声をかけてきた人物がいたのだ。
その人は眼鏡をかけた美しい女性だった。
容姿は綺麗な銀髪ロングヘアーで目は碧眼である。
また白衣の上からでも分かる大きな胸をお持ちであった。
さらには巨乳によって押し上げられたことで出来た膨らみは、より一層強い魅力を感じさせたのだ。
そんな人が俺に話しかけてくるものだから、緊張しながらも聞き返すと驚くべき答えが返ってきた。
何と彼女は異世界人で、魔法使いでありながら科学者でもある人物だという。
自分が目を覚ました時に居た彼女と偶然知り合い、意気投合したことで行動を共にしているらしいのだ。
そして、先日出会った彼女はこう自己紹介してきたのだった。
「私の名前はイリス、魔法使いにして科学者よ」
そういって微笑む彼女にドキッとすると同時に、何故彼女が俺に声をかけてきたのか気になった俺は尋ねてみることにしたのだ。
すると、彼女は微笑みながら答えたのだった。
「実は貴方にお願いがあるの。私と一緒にこの世界を支配している魔王を倒して欲しいのよ」
その言葉を聞いた瞬間、俺は驚きと同時に嬉しさが込み上げてきたのだ。
なぜなら、こんな世界を救った伝説の勇者になれると想像しただけで興奮してきたのだ。
だから、迷わずに了承すると答えたのだった。
それからというもの、俺は仲間達と共に世界中を旅しながら旅を始めたのだった。
最初は上手くいかずに挫折しそうになったが、その度に仲間達から励まされながら努力を続けることができた。
そうすると、次第に実力をつけていくにつれて自信もついてきて、最終的には仲間と共に魔王城に攻め込んで、
魔王を倒すことができたのだ。
そして、今は王都で勝利パレードが行われていた。
俺を中心として多くの人々が集まり、歓声を上げているのを見て感極まっていると、
目の前に一人の人物がやってきたのが見えたのだ。
それは元王女であり、現国王であるリザリー姫だったのだ。
俺は嬉しさのあまり、彼女に駆け寄ると抱き締めながら感謝の気持ちを伝えた。
そうすると、彼女は微笑みながら言ったのだ。
「これで漸く、国に帰れると思うとホッとしています。今度はあなたがこの世界を救う番ですね! 応援してます!」
そう言われて照れつつも、胸を張って答えた。
こうして、俺の新たな旅は始まりを告げたのだった。
無事に魔王を倒した後、俺はこの世界に残り、冒険者として活動することになったのだ。
世界を救った実績があるということで、すぐにでもSランクの認定を受けられると言われたのだが、
敢えてそれは断ったんだよ。
その代わりに一つ提案をしたのだった。
それは、俺をSランクではなくSSランクに認定して欲しいというものだったんだ。
この提案には、流石に仲間達も驚いた様子だったが、皆、納得してくれたようだったため、
晴れて俺は世界最強の冒険者になったんだ。
そして今日も、クエストを求めて冒険者ギルドを訪れたのだった。
そうすると、受付嬢が声をかけてくるなりこう言った。
「あら、お久しぶりですね勇者様。今日は何のクエストをお求めでしょうか?」
受付嬢のアルビナさんの問いかけに対して、俺は笑みを浮かべながら答えた。
「今日のクエストは、特別認定でね。急ぎじゃないんだ。また後で取りにくるから」
と伝えると、俺の意図を理解したのか彼女はそれ以上追及してくることはなかった。
(さて、どうしよう?)
と考えていると、一人の職員が話しかけてきた。
俺がまだこの町に来て間もない頃、初めてお世話になったギルド職員のサラさんである。
用件を尋ねると、彼女は驚いた表情をしながらも答えてくれた。
「それは驚きですね! では、本部にお問い合わせしておきますね!
つきましては、王都からの書簡を預かっております」
そう言われ手渡された手紙を見てみると、王国の紋章が捺印されていた。
さっそく開封してみると、中身にはこのようなことが書かれていた。
【拝啓、勇者様へ お変わり御座いませんか?
先日お知らせされた冒険協会に関する用件に、署名捺印押印だけしたいので至急、
王城へお越しください】
「なんだ? これは。いつの間に用意されていたんだ?」
そう呟きながら、とりあえず向かうことにしたのであった。
そして王城に到着してからすぐに中に入ると、やはり皇帝は怒っていたようでかなり不機嫌だった。
明らかに俺に敵意剥き出しな感じであり、今すぐにでも魔法を放ってきてもおかしくない状況なのである。
というか、実際に魔法撃ってきた。
慌てて避けると、剣を抜き放って構えた。
そうすると、相手の方も戦う気満々のようで、いつでもかかってこいと言わんばかりの雰囲気を発していたのである。
しかし、俺はそんなことをするつもりもなかった。
わざわざこんなところで戦うつもりもなかったし、そもそも相手の方が魔法が得意なようであることから、
魔法使いであるこちらが有利な立場にあるのは当然のことなのだ。
そこで、早速切り札を切ることにした。
そう、マジックバックに手を突っ込むと、それを目の前でバラバラに引きちぎって見せてやったのだ。
案の定、予想通りの出来事が起きたのだった。
それを見た皇帝と部下たちは驚いて目を見開いているようだったのだ。
その隙を突いて懐に飛び込もうと思ったのだが、流石に相手は歴戦の猛者であるらしく、
すぐに立ち直ってしまい、再び魔法を放とうとしたのである。
だが、今回はその動きを待っていたんだ。奴が魔法を放つ瞬間に、こちらも魔法を発動させてやったんだ。
そう、魔法の発動速度の違いを見せつけ、さらに自身の愛用武器の【魔剣ガルシウス】を振るうと、
皇帝の周囲を囲い込むように魔法壁を張ってしまったのだ。
その瞬間、突然目の前に現れた魔法の壁に対して戸惑いを隠せなかった皇帝であったが、
それがトラップであるとは気づかずにそのまま攻撃を受けてしまったのである。
そして壁は粉々に砕け散り、無数の破片が皇帝に向かって飛んでくるのが見えた皇帝は慌てて避けようとしていたが、
一歩間に合わずに攻撃を受けてしまったのである。
しかも、運悪くそのうちの1つに心臓付近を傷つけられてしまい瀕死の状態になっていたのだ。
そんな様子を見ていた部下の騎士たちは慌てて駆け寄っていくが、
もはや助からないのは誰の目にも明かだった。
そんな様子を眺めていた俺に、
「無能な皇帝め。最期まで殺られるなんて、さぞかし無念でしょうね」
とサラさんが話しかけてきたのだ。
それに対し、俺は曖昧な返事を返しつつ立ち去ろうとすると、後ろから引き留められて呼び止められた。
振り返ると、どうやら個人的な話があるということだったので話を聞くことにした。
話によると、どうやら俺を騎士として採用したいとのことだった。
なんでも、正義感に溢れる俺の行動を見込んでのことだったらしいのだが、
流石に俺としても困惑してしまったため断りを入れることにしたのだ。
(まあ、そうなるだろうなとは思ってはいたが)
そう思いつつその場を立ち去ろうとすると背後から声をかけられたので振り返ると、そこには一人の女性がいたのだ。
どうやら彼女はこの国の騎士団長のようだった。
彼女の口から発せられた言葉を聞いた俺は驚きのあまり固まってしまっていたのだ。
何故なら、俺がこの国で最強の冒険者だということを聞いたというのだ。
さらに俺が冒険者として活動しながら、この国の為に色んな功績を上げていたことも知っており、
そのことから是非とも私を手駒に加えて欲しいと言ったのだ。
そう、誘われたのである。
それも、男なら絶対に断れない状況で、けれど、俺には断るしかなかった。
何故なら、俺はこの国の人間ではないからだった。
だが、その一言は逆に火がついてしまい、俺は決意した。
「いいだろう……だが、一つ条件がある」
そう言って指し示したのは、 俺の【魔剣ガルシウス】であった。
それを見た彼女は納得した様子で承諾してくれたのだった。

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