冗談のつもり
同じ学校の同じ学年だったというだけで、その子とはクラスが違ったし、知り合いでもなかったが、卒業後、彼女の自殺がいじめが原因じゃないかというネットの記事が流れ、同時に彼女の両親がいじめを防げなかった学校の管理責任を訴えた。
でも、違うクラスの話だったし、もう卒業した学校のことだったので、私には何の関係もなく、興味もなかった。だが、その子の両親が学校相手に裁判を起こし大きく話題になると、同じ学校同じ学年だったというだけで、私がいじめの主犯だったという書き込みが広がっていた。
気づいた時には、「いじめは犯罪、お前が死ね」と私を名指しで攻撃する書き込みでネットはあふれていた。黙っていたら、どんどん悪くなりそうだったので、警察に相談し、弁護士も雇って、根も葉もないうわさを面白がって書き込む連中を一斉に訴えた。訴えられると知るとようやく私への攻撃的な書き込みも減ったが、最初に私がいじめの主犯だと書き込んだのは、私の元同級生だった。「冗談のつもりで私の名前を使い、ネットに書き込んだら、一気に拡散されてしまって止めようがなかった」と謝罪してきたが、私は許さず、警察への被害届を取り下げず、名誉棄損で警察に捕まえてもらった。「冗談のつもりだったから、本当に許して」と弁護士を通じて私に言ってきたが、許す理由がなかった。また、学校の管理責任を訴えていた両親の裁判も、いじめがあったという証拠が見つからず、その子の両親の敗訴が決まった。学校から多額の賠償金を得られると周囲に豪語していたらしく、子供が自殺したのを利用して、ただ大金を得ようとしていただけらしい。
しかも、敗訴の判決が出る直前、ネットに、その子が自殺した本当の理由が「両親からの虐待」と書き込まれ、学校に敗訴した両親は、その書き込みのせいで敗訴したと、その書き込み主を相手に裁判を起こそうとしたが、「両親からの虐待」という書き込み主は、まるで幽霊の仕業のように特定できず、ただ、自殺した子の両親が、本当にクズらしいと広まっただけだった。