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異世界からの獣

私だけが助かった。バケモノだらけのあの世界で、先生も友達もみんなバケモノに食われたと、本当のことを話したが、誰も信じてはくれず、私がみんなを殺し、でたらめな証言をしていると疑った。特にネットでは、私を完全に犯人扱いで、犯行方法を根拠のない憶測で書き連ねるネットの検証記事が乱立した。
確かに、生き残った自分でさえ、あんなバケモノが実在していたとは今でも信じられない。あれを見たことない人たちが、私を疑うのも無理はなかった。そして、行方不明の友達の親たちの数人が、子供の居場所を知るため、私を拉致し、人気のない廃屋に監禁して私に詰問した。
「君に危害をつもりはない。ただ、死んでいてもいいから、子供の遺体の在処を私たちに教えてくれないか」
だが、そういう親御さんの目は、私が口を割らないなら殺すぞという殺意に満ちていた。私もみなを殺した犯人に疑われるのに疲れていたので、殺すなら、殺せと腹をくくった。
「みんな、バケモノに食われた、警察にもそう言った。遺体が欲しければ、あいつらを探して、その腹をかっさばいてくればいい。逆にあんたらが食われると思うけど」
「こ、この期に及んで、まだそんなデタラメを」
「やっぱり、こんなクソ殺人鬼、痛めつけないと吐かない」
私の拉致に協力した他の親御さんが、さっさと拷問を始めろと吠える。
「そうそう、どんな風にうちの子を殺したか知らないけど、その代償は払ってもらわないと」
絶体絶命だと思ったとき、あのバケモノが、こっちの世界に現れた。私を拉致した親御さんたちは、自分の子供たちと同じように食われ、あの世界で生き残った私は、その時の経験を活かし、再び、逃げ延びることに成功したが、その廃屋の外に出ると、世界はあのバケモノだらけで、私の話を信じなかった人々は当然のごとく、あいつらに食われて死んだ。

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