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人を呪わば穴二つ

「あと一回ですね」
「あと一回?」
「そうです。あなたの残り寿命から呪い殺せるのは、あと一回が限界です」
「あと一回、そうなら良かった」
「はい?」
「その一回で、私を殺して」
「あなたをですか?」
「ええ、これまで、目障りな教師に、恋のライバルになりそうな同級生、出世の邪魔しそうな上司に同期、随分呪い殺したわ。おかげで、私に大きな挫折を味合わせる奴は一人もいなかった。いい人生だったと思うから、そろそろ、幕引きにしていいんじゃないかと思って」
「それは良かった」
「え?」
「ちょうど、そろそろ、あなたに呪い殺された人たちが、あなたを連れに来てますので。あなたは人を呪い過ぎました、もう寿命は、残っていませんよ。でも、あなたが最後の一回を自分に使いたいと言っていただき、こちらも、魂の清算が気持ちよくできます」

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