バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

涙の訳は

それを見て慌てた俺は彼女を落ち着かせようと試みるのだが、 何故か拒否されてしまう。
どうしたものかと思い悩んでいると彼女は泣き止んだのかゆっくりと語り出したのである。
「実は夢を見てしまったんです。あなたが他の女性と愛し合っている姿を見てしまって、しかも相手の女性もまた嬉しそうに応じている所を見てしまいました」
と言って再び泣き始めてしまったのだった。
どうやら俺と魔王が仲良く話をしている場面だけを延々と見せられたらしいんですよ
それだけではなく彼女は涙声で訴えかけますが俺は首を横に振り続けたのでしたよ、
何故なら俺には前世の記憶があるのだからな。
(でもこれは言わない方が良いかもしれないな)
と思いながらも黙っていることにしたのですが、それが逆効果だったようで、彼女は俺が何か隠そうとしていることに気が付いたらしく余計に疑われてしまいました。
なので仕方ないので覚悟を決めて全てを話そうと決めたわけなんですが、
なかなか勇気が出ずに悩んでいると彼女の方から声をかけられてしまいまして、
とうとう逃げ場を失くしてしまったわけですよ。
どうしようと思いつつも意を決して俺は打ち明けることにしたんです。
だけどやはり怖くなったのもあって中々言い出すことができないでいると、やがて痺れを切らした彼女が口を開いたことでやっと言えそうな状況に
漕ぎ着けることができたんですがその直後でした。
「やっぱりあなたは私よりも魔王の方が大事なんですね!」
そう叫んだかと思うと彼女は俺の部屋から出て行こうとしたので慌てて止めることにしたのですが、彼女は完全にパニック状態になっており何を言っても無駄のようでした。
普段は大人しい女性だと思っていたんですがどうやら違ったようです。
(まあ仕方ないか)
と思いながら彼女の後を追いかけることにしまして何とか説得しようとしましたが結局ダメでした。
それどころか逆に逆切れされてしまわれたようでして……俺は困ってしまいましたね。
(どうしたものかな)
と考えながら歩いている内にいつの間にか目的地である湖に辿り着いていましたよ。
そこで少し落ち着いたのかようやく落ち着いてくれたみたいでホッと胸を撫ろ下ろしていると、突然彼女が抱きついてきたのでびっくりしながらも
受け止めることに成功したもののバランスを崩してしまいそのまま押し倒される形で転んでしまいましたが特に痛くはなかったので良かったですよ。
「大丈夫か?」
そう尋ねると彼女は恥ずかしそうにしながらも小さく頷いてくれたのでホッとしたのと同時に彼女を立ち上がらせようとした時でした。
足下で水面を踏んだような音がしたことに気が付いたのです。
その直後のことであったでしょうか?
俺の体はいつの間にか水中へと引き摺り込まれていてみるみるうちに全身が沈んでしまうような
形で落ちていったわけでしたが何とか踏ん張ることで身体が投げ出されずに済んだものの、
もう浮上することが出来なくなってしまい途方に暮れていたところである事を思い出したんですよ。
それは以前にシルフィーと行ったことがある温泉のことです。
そこではお湯に浸かり体を温めることができるのですが、
この湖にも同じような効果があるのではないかと考えていたわけなんですがどうやら正解だったようでして、
徐々に体が回復していくのを感じた俺はそのまましばらく浸かっていることに決めたのです。
「ふぅ、温かいな」
俺がそう呟くと彼女も同意してくれたようでした。
そのせいか先程までの緊張感もなくなりましたので、自然と会話が出来るようになっていたわけですがその際に彼女に無理を
していることや我慢していることなどを聞かれた答えを聞いた瞬間に、涙を流しながら嗚咽しているではないですか、
まさかここまで苦しんでいるとは思わなかった俺は自身の不甲斐なさと浅はかさを悔いたあと彼女を抱きしめてあげようとしてしましたのだが、
彼女はそれを拒むように俺から離れていき距離を置こうとしたんです。
それに対して残念に思っている自分がいて、彼女の気持ちを考えると心が傷みますがそれでも俺は彼女のことを諦めたくないし絶対に離したくないという気持ちが
強かったのです。
だからこそ彼女が望むのであればなんでもしてあげたいと思ったのですが、
どうやら違ったようですね、彼女は泣きながらこう言ったんですよ。
そして俺の腕を強く掴みながらこう訴えかけてきたんです。
「私はあなたのことを愛しています。初めてお会いした時から一目惚れをしておりましたが、その気持ちがさらに大きくなり始めてからは不安で仕方がなくなりました。
それはあなたの心が奪われるのではないかと思っていたからです」
と泣きながら訴えかけてきましたので俺は彼女を落ち着かせるために背中を撫でてあげることしかできずにいる自分が情けなかったのですがそれでも
彼女は泣き止んでくれたのでホッとしたわけですがね、
その後で彼女が俺に抱き着いてきたので優しく抱きしめ返すと、
彼女もそれに応えてくれるかのように強く抱きしめてきてくれたおかげで少し楽になれましたから感謝していますよ。
そんなやり取りをしている内にいつの間にか時間が経っていたようでしてね。
そろそろ帰らなければまずい時間になってしまいましたので名残惜しいですが帰ることにしましたよ。
そして帰り際のことです。
彼女は突然俺を呼び止めたと思ったらキスをしてくれました。
「ありがとう、また会いましょうね」
その言葉を聞いた瞬間に嬉しいと思う反面別れがあることを感じて涙が出そうになりましたよ。
だけど、涙をこらえつつ彼女に向かって精一杯の気持ちを込めて挨拶をすることにしたんだ。
「こちらこそありがとう、これからもよろしくね!」
と言うと彼女は微笑んでくれたのでホッとしつつ帰宅することにしたのでした。

しおり