水浴び
「うん、よく似合ってるわよ。それじゃあ行きましょうか」
そう言うと彼は私の手を取り歩き始めたのだが、その時私は驚きのあまり声が出なかったのだった。
何故なら彼は魔族の王であられる方だと聞いていたからだったというのに、なんと彼こそ私の婚約者でもあるとのたまったのである。
その話を信じたわけではないけれども、何故かそんな予感がしていた私なのであったのだ。
(もうどうなってもいいや)
と思った瞬間でした。
翌朝、目を覚ました時に隣で寝ている女の子の姿を確認すると昨晩の出来事を思い出して顔が赤くなるのを感じたがすぐに気持ちを切り替えて支度を整えてから
部屋を出たわけで、俺は、シルフィーと話をすることにする。
「おはよう、シルフィー、昨日はよく眠れたか?」
と尋ねると、彼女は微笑んで答えてくれた。
「ええ、おかげさまで」と言いながら微笑むその姿はとても可愛らしく見えるのだが、それもそのはずだろうと思うくらいに美しく輝いているように
見えるのは気のせいではないだろうと思っていたら急に抱きついてきたもんだから驚いてしまったんだけど、
そのままキスをされてしまいそうになったので咄嵯に避けようとしてしまった結果後ろに倒れて頭を強打してしまったのだ。
「いたたたっ、何すんだよ! いきなり!」
と言うと彼女から返ってきた言葉がとんでもないものだったのである。
その内容というのが次のようなものでしたよ。
確かに一目惚れって事もあるかもしれないけれどさ……だけど俺は違うと思うよ。
シルフィーとはね……多分だけれど前世でも恋人同士だったんじゃないかなって思ってるくらいなんだ。
いやだってそうとしか思えないだろう。
「え、どうしてそう思うんですか?」
と尋ねると、彼女が答えた。
だってさ、俺が前世で彼女のような存在がいたら絶対に忘れるわけがないと思うんだよ。
いや絶対だよ。断言できる。
それにさ、シルフィーを見ていると凄く懐かしく感じるんだよ。
だからきっと俺と君は特別な関係だったんじゃないかなって思うんだけどどうだろうか。
(うーん)
と思いながら考え込んでいたらどうやら顔に出てしまっていたらしいのである。
それを見た彼女は一瞬驚いたような表情を見せたあと笑顔でこう言ったのだ。
「ふふ、そうですね」
と言うと続けて言った言葉はこれである。
私の初めては全部あなたのものなんですよって言ったら信じてくれますか、
「お、おう」
と戸惑いながらも答えていた俺だったが、それを聞いた瞬間に恥ずかしさで死にそうになってしまうのと同時に嬉しさが込み上げてきてしまった。
そして次の瞬間には無意識のうちに彼女を抱き締めていたのである。
それからしばらくの間はお互いに見つめ合ったまま動けないままでいたわけだが、先に動いたのは俺の方であったのだった。
というのももう我慢できなかったのである、
キスしたいという気持ちを抑えきれなかったのだ。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか彼女の方から顔を寄せてきたことで俺たちの唇が触れ合いそうになった瞬間のことだった、
彼女が目を閉じたのを見てしまい益々気持ちが昂り始めてしまった結果我慢できずにキスをすることになってしまったのであった。
初めてのキスの味はよくわからなかったけども柔らかい感触だけは伝わってきたがそれだけで満足するわけもなくそのまま舌を差し込んでみることにすると
向こうもそれに応えてくれるかのように絡ませてくるのがわかったので嬉しかったし興奮したことは言うまでもないだろう。
「んっ、ちゅっ、んんっ、んん」
と息遣いが荒くなっていくのを感じながらもキスを続けているうちに段々と気分が高揚してくるのがわかる。
それにつれて頭の中は真っ白になっていき何も考えられなくなっていった。
そうしてしばらく経った頃だろうか、ようやく我に返った時には既に遅かったのである。
(やべぇやりすぎた)
俺は焦りながら謝ることにしたのだが、その時には既に手遅れだったのである。
何故なら彼女はすっかり蕩けきった表情をしており焦点が定まっていなかったからだ。
「お~いシルフィー大丈夫か?」
と言うと彼女はハッとしたような表情を浮かべるなり恥ずかしそうに俯いてしまったのである。
その様子を見ていて可愛すぎて思わず抱きしめそうになった俺ではあったがそこはぐっと堪えつつ優しく声をかけ続けたのだ。
「ごめんな、やり過ぎちまったみたいだな」
と言うと彼女は首を横に振って否定してくれました。そして小さな声でこう言ってきたのです。
「謝らないでください、私の方こそ申し訳ありませんでしたわ……」
そう言いながらもじもじする姿がまた可愛くて仕方がありませんでしたよ!
(ああもう可愛すぎる)
と心の中で叫びつつ感動していた俺でしたが、ふと我に返ると、ここがまだ森の中であることを思い出して慌ててその場を離れることにしたのであった。
その日の夜の事である、
食事を終えて眠りについた俺とシルフィーだったわけだが、なかなか寝付けずにいる時に隣で寝ている彼女がもぞもぞ動いていたため目を覚まして
しまった俺が目を開けるとそこには驚くような光景があったのだった。
なんと全裸姿になった彼女の姿があったのだから大変ですよ。
「えぇぇぇ!!」
思わず叫んでしまった俺は悪くないと思うんですよね、
だってそうじゃないですか。いきなり目の前に裸の女性が現れたら誰だって驚くと思うんですよ。
すると彼女が恥ずかしそうにしながらも話しかけてきたわけなんですが、その内容というのがとんでもないものだったものですから俺は困惑してしまいましたよ。
「水浴びしてきますね」
そう一言だけ残して行ってしまったわけですが、一体何だったんでしょうかね?
まあ良いかと思い寝ようとしたんですがどうにも眠れなくなってしまい結局朝まで起きてたんですけどね。
「シルフィー遅いな」
俺は水浴びに行った少女を心配するが、彼女からの応答がない。
(まさか何かあったのか!?)
と不安を感じた俺は様子を見に行くことにしたわけなんですが、なんとそこには一糸まとわぬ姿で水浴びをしている彼女の姿があったわけですよ。
そんな姿を目の当たりにしてしまった俺は言葉を失ってしまいました。
それくらい衝撃的だったということです、
だってあんなに美しい女性の姿を目にしたのは初めてでしたから、しかもそれが自分の愛する妻であり、さらには婚約者でもあるというのですから嬉しくないはずがありませんよ。
そんなことを考えているうちにいつの間にか彼女に近付こうとしている自分に気づいて我に返り慌てて踵を返したところでした。
すると背後から声がしたので振り向くとそこには彼女が立っていたわけでしたが何故か頬が赤くなっていました。
理由はわかりませんが何か隠し事をしているような感じでした。
とりあえずその場は見なかったことにして立ち去ることにしましたけど、もしかして昨日の事が原因なんでしょうか。
一体何があったのか知りたいと思いつつも聞くのが怖くて聞けないという葛藤に苛まれているうちに時間は過ぎていくばかりでした。
そして遂にその機会がやってきたのです。
それは夜の出来事で、寝ている時にふと目が覚めてしまった俺が横を見ると彼女の姿がなかったので探しに行こうかと思っていたら戻ってきたのだが、
様子がおかしかったので聞いてみたところなんでもないと言って頑なに教えようとしなかったのである。
俺は彼女のことが心配だったので思い切って聞いてみたところ意外な答えが返ってきたのだった。
どうやら俺に何か隠し事をしているらしい事がわかったのだ。
おそらく昨日起こった出来事に関係することなのではないかと思っているため詳しく聞きたいところだがなかなか話してくれないためどうしたものかと考えていたら、
突然彼女が泣き出してしまったのだ。