俺と魔王、そして彼女
「あれ? そういえば魔王ってまだ死んでないよね?」
そう思い振り返るとそこには瀕死状態の魔王がいたけど、
そして最後の力を振り絞るようにしてある事を言い残して息絶えたんだよ。
それは一体何かというとだな……、そう、 自分はまだ生きているということだ。
だからこそお前にとどめを刺して欲しいということだったんだ。
そう言われた時は、もう既に覚悟を決めていたので迷うことなくその望みを叶えることにしたんだ。
そして、 こうして長い戦いに終止符が打たれたわけだ。
だが、しかしこれで終わりではなかったのだ。
その後、俺達は一旦王国へと戻り今後どうするかについて話し合うことにしたんだが、
その際に例の将軍からこんな話を聞かされたんだよ。
「実は最近になって新しく独立した国が誕生したという話を耳に挟んだのでもしかしたら
そこにいるかもしれないと思ったんです。何しろあそこには元国王がおりますので」
そう言われたので早速向かってみることにしたのだが、街に着いてみて最初に目に飛び込んできた光景がこの有様であったわけで、
当然ながら戸惑っている俺達に対して話しかけてきた男がいたんだが、
その男はなんとこの国の元将軍ではないかということに気づいた勇者一行であったのだがその男からの話によると、
それは魔族による国家侵略であり 勇者の国で起こったこととほぼ同じようなものと聞かされたんだよ。
そして、それを防いだのがかつて自分達が封印した伝説のアイテム、伝説の剣の力があったために
勝利することができたのだとのことだったのであるが、何故今更この国を攻めてきたのだろうかと思ったんのだが、
そこであの男の事を聞いてみると案の定予想通りの出来事であったことが分かるのだった。
「実は、この国にある魔導都市に眠っているとされる究極の剣を手に入れた者が
この国の新しい王になる権利を有するという噂があるのです。
なので、きっとその剣を狙いに来たのは間違いないでしょうね」
と聞かされて更に疑問が深まっていったのだが、俺達勇者一行は再びこの地へと戻ってきたことでその真相を知ることになるんだよな。
「まさか、あの剣が関係していたとは思いませんでしたね」
そう、実はあの剣には秘密があったんだよ。
その事を知った俺達は急いで魔導都市へと向かうことにしたんだが、道中で魔族の襲撃を受けてしまい苦戦を強いられることになったんだ。
でも何とか切り抜けることが出来たから良かったものの、油断は禁物だという事を改めて実感させられた出来事でもあったな。
そして、ついに辿り着いた俺達だったがそこで待ち受けていたのは予想もしていなかった展開であったわけで……、
なんとそこに居たのは魔王本人だったのだ。
しかも奴は俺にこう言ってきやがったんだよ。
「勇者よ、よくぞここまでたどり着いたものだな褒めてやろう」
って言ってきたもんだから正直驚いたよ。
「何故お前がここにいるんだ?」
と聞くと、魔王は笑いながら答えてくれた。
「それは簡単なことだ、私がこの国を統治することに決めたからだ」
それを聞いて更に驚くことになった勇者一行であったが、
魔王の次の発言によって更なる衝撃を受けることになるのだった。
なんと奴はとんでもないことを言い出したのである。
それは……、 俺達が倒したはずの魔王が生きていたという事であり、
しかもそれが自分の父親だったという衝撃的な事実に勇者達は驚きを隠せなかったようだね。
「魔王は生きていたというのか?」
そう勇者が言うと、なんと魔王の手下である魔族達が反論してきたじゃないか、
お前達の祖先によって殺された魔王様を蘇らせ、この国を統治してもらおうと企てたところ、
邪魔されたのでやむなく排除することにしたとのことだったんだけど、それが何故俺達を倒すことになったんだ? って話だよ。
でも、よくよく考えてみるとその理由っていうのが、単に魔王様を復活させるだけの力が無かっただけなんじゃないかって思っちゃったんだよ。
だってそうだろ? もし本当にそのつもりだったのなら自分達でどうにかすれば良かったわけだし、
わざわざ他の奴らに頼む必要なんて無いはずなんだよな、まあ要するに何が言いたいかっていうと、
要するに奴らにとっては魔王が生きているか死んでいるかということは重要ではないってことが言いたかったんだよね。
「そういうことだ、理解したかね?」
と聞かれ、俺達は渋々納得したふりをしていたが、心の中では腸煮えくり返っていたんだろうなって思う。
だって自分達の親玉を殺そうとしている奴等が目の前に居るんだもん、誰だってブチ切れるだろう普通。
だから俺はこう言ったんだ。
「ふざけるな!」
そう言うと奴は怒り出したんだけど、よく見たら泣いてるんだよね。
それを見て俺達は笑ったんだが、でも流石に可哀想だと思って、
せめてもの慈悲で楽にしてやろうと思って俺達は、彼に近づいて行ったよ。
そして俺が剣を振り下ろす瞬間、彼がこう言って来たんだ。
「助けて」
俺はそれを聞いて
「もう死んでるのにか? まあいいか」
そう呟いてトドメを刺した。
するとその瞬間眩い光が放たれて、気が付くと俺達の前には一人の少年が現れたんだよ。
それが例の魔王本人であったわけで、どうやらさっきの魔王は本当に死んでいたらしいんだ。
しかし何故この少年はここにいるんだろうか?
疑問に感じていたんだが、その答えはすぐに判明する事になるのだ。
実は、魔王が倒されたと同時に 少年は元に戻ることが出来たみたいなんだよ。
つまり、今の魔王は母親似って事だな。
なんていうか、うん、全くの別人になってしまいましたよ。
おかげで安心してこの少年を優しく抱いてあげることが出来たというわけだけど、
いや、しかしこのギャップがまた良いといいますかね。
たとえ見た目が同じであったとしても中身は全然違うわけで、やはり、中身もしっかりと考慮すべきなのだよ。
まあとにかく無事に魔王を倒すことが出来たわけだから良しとしたいところなのだが、
ここで新たな問題が 発生していた事に俺は気づくのだった。
それは何かというと、そう、あの伝説の聖剣の事である。
魔王を倒したことにより、聖剣もまた封印されてしまったのである。
そして、それと同時に二つに割れてしまったんだ。
それが意味するところは何かというと、一つはもう一本存在するということなんだよ。
つまりだ、そのもう一振りがどこに有ったかと聞かれると、
なんと驚くことに、この場所の奥底で眠っていたのだ。
しかも、かなり深い場所まで行かなければならず、辿り着くためには様々なトラップを突破する必要があったため、
その道は険しく厳しいものだったわけだが、それでも何とか辿り着けたお陰で再び手に入れる事ができたというわけだった。
そして、それから更に数日後、俺達は魔王から奪った魔導書を使い魔法を習得するために勉強することになったんだ。
勇者として召喚された際に授かった能力は 、既に失われていたが、新たな力を得るためには努力が必要だからな。
ということで俺達は、必死に魔法を覚えようとして勉強を続けていたわけだが、ある日のことだった。
俺はあることを思いついたんだよ。
それは一体どんな内容かというと、それはな。
実は魔法というものは、詠唱を唱えることで発動するものであって、
それを省略することができれば、より早く発動できるのではないかというアイデアが浮かんだわけだ。
ただ、この考えには極めて危険が伴うものでもあることだと考えていた。
何故なら、魔法の詠唱を間違えばどうなるか?
当然、失敗することになるんだ。
それ故に、みんなは不安がっているようでしたが、ある日のこと、ある事件がきっかけで事態は大きく変わり始めることになるのです。
それはある日の夜のことだった。
俺が一人でいる時に、突然 背後から声をかけられたんです。
慌てて振り返るとそこに立っていたのは、一人の女性で、彼女は自分のことを魔王の娘だと言ったんです。
そして、俺にこう言いました。
「貴方にお願いがあります、どうか私の父を倒して欲しいのです」
俺はそれを聞いて驚きました。
何故ならば、魔王を倒すことは即ち、この国を救うことに繋がるからです。
しかし、魔王の娘である彼女が何故そんなことを言い出したのか不思議に思い尋ねると、彼女はこう答えました。
「私はただ父の暴走を止めたいだけなのです」
と言ってきたんですよ。
彼女の話によると、どうやら魔王は何者かによって洗脳されているようでした。
その黒幕の正体を突き止めるためにも協力して欲しいと言われたので、俺はそれを引き受けることにしたんだよ。
そして俺達は、共に旅をすることになったのだが、途中で様々な困難が待ち受けていたんだ。
例えば、魔族達の襲撃を受けたりとか、罠にはまったりとかね。
でも何とか切り抜けることが出来たから良かったものの、一時はどうなることかと思っていたよ。
しかし、そんな中でも彼女は常に前向きで、諦めずに頑張っていたんだよな。
そんな姿に励まされた俺は、次第に彼女に好意を抱くようになっていったんだ。
そして遂には告白するに至ったわけだが、その時の返事はなんとOKだったんだよ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
と言ってもらえた時は本当に嬉しかったな。
それからというもの、俺達は幸せな日々を送っていたんだが、
そんなある日のこと、彼女が突然姿を消してしまったんだ。
一体彼女はどこへ行ってしまったんだろうか?
心配になった俺は必死になって探していたんだけど、結局見つけることが出来なかったんだよ。
でも諦めずに探し続けること数日が経過したある日の事だった。
なんと彼女が戻ってきたのだ!
しかも、何故か魔王を連れて……。
どうやら二人は和解したらしく、今ではすっかり仲良しになっているようだったので安心したよ。
しかし、何故二人が仲良くなったのかについては教えてくれなかったんだよね。
まあ別に無理に聞く必要はないかなって思ったから聞かなかったんだけど、
でも気になるっちゃ気になるんだよな、なんて思いながら日々を過ごしていたら、いつの間にか一年が過ぎてしまっていたというわけです。