そして、訪れるその時を
そう、彼女は実は人ではなく魔物だったことが判明したんだ。
しかも、その正体があの踊り子だったとは夢にも思っていなかった。
でも納得できる部分もあるんだよ?
確かに彼女の舞を見た時に感じた感覚は普通の人間のものではなかったからな。
だからこそ、彼女が人間ではないと知って安心した自分がいたのも事実であるわけだが、それでもまだ疑問が残る事もあったんだ。
どうして俺なんかにそこまで執着するのかという事だ。
だがそれもすぐに解決することとなるのだ。
何故なら彼女が俺に教えてくれたからなんだ。
自分の正体を……そう。
彼女は魔族だったんだ。
つまり俺の敵という事になる訳だが、何故だろう……?
何故か、それに対してあまりショックを受けなかった自分がいたんだ。
それどころか嬉しさを感じていたことに驚いていたが、それでも俺は彼女に告げることにしたんだ。
だからという訳ではないけど、彼女と一世一代の逃避行に出る決意をしたわけなんだが……正直言って成功するとはあまり思ってはいなかったんだがな。
というのも逃げてくる際に目撃した街の中には彼女の仲間と思われる奴らの姿も見えていたからだ。
そんな俺の考えを見透かしたかのように彼女はこう言ったんだよ?
それは、彼女の正体は魔族の中でも上位の存在であり魔王と呼ばれる存在なのだと言うのだ。
しかも、その彼女が俺を愛してくれるなんて奇跡としか思えないような話だが事実として起こっている以上受け入れるしかないだろうなと思っているよ。
まぁ、そんな経緯で俺と彼女の関係は続いているわけだが、
未だに彼女に尋ねたいことがあったりするんだよ。
彼女は一体何者なんだろうか?そんな事を考えながらも今日も俺は彼女を抱きしめるのだ。
いつまでも愛し合うことが出来るように、気が付けば俺も彼女に合わせて踊りを踊っていたよ。
そう、彼女の踊りと俺の動きはシンクロしているかの如く同じ動きになっていた。
そして最後のポーズで二人同時にフィニッシュを決めると、お互いの顔を見つめ合いキスをしたんだよ、
とても幸せな時間だったな。
それから数年後、俺はついに魔王軍と戦うことになったんだ。
「勇者様、どうか魔王を討伐してくだされ」
王様にそう言われ、俺達は渋々了承することにしたのだ。
「お二方、申し上げたい事があるのですが」
俺達の前に現れたのは、とある国の魔法軍団長であり魔族の一人だった男だ。
彼は俺達に対してこう告げるのであった。
自分の妻の仇を取ってほしいという頼みだったのだよ。
こで俺たちはその依頼を引き受ける事にしたんだ、
そうしなければこの国に平和は来ないと思ったから、俺達は旅に出ることになったんだが、途中で出会ったのはかつての仲間である女魔法使いと聖女だったんだ。
二人は俺と同じで旅をしていたらしく、これから一緒に行動する事になったんだ。
「勇者様、今回は一緒に同行させていただいてありがとうございます」
そう聖女が挨拶してきたんだけど、その時の俺はといえば妻を失っておかしくなっていたんだよ。
その事を説明しても信じてもらえず困っていたら、もう一人の仲間の女魔法使いが助けてくれたんだ。
お陰で妻を失ったことを正直に話すことが出来たんだ。
彼女達も理解してくれて力になってくれたことで俺が救われたよ。
そして遂に俺達は魔王城に到着することに成功したんだが、そこで待ち受けていたのは想像を絶する程の強敵だった。
俺達は諦めることなく必死に戦った結果何とか倒す事が出来たんだ。
俺達の姿を見た王様達は大喜びしてくれたんだが、それと同時に俺の妻の仇を取るという願いは果たされたのだということを教えてくれたんだ。
だが、それで終わりではなかったんだよ、実はな、
倒したはずの魔王はまだ生きているらしいという事を知ったんだ。
「勇者様、どうか魔王を討伐してくだされ」
王様にそう言われ、俺達は渋々了承することにしたんだ。
「お二方、申し上げたい事があるのですが」
と魔法軍団長である魔族の男が言ってきたのだ。
男はこう告げるのであった。
実は自分の妻を殺した人物の中にもう一人の人間がいたということを、
その男はどうやら魔王軍のスパイだったらしいのだが、その男が今何処にいるのか?
という情報を得たらしい。
そこでその居場所を突き止めてほしいと頼まれたんだが、俺達もその男には用があるんでな協力することになったんだよ。
だがしかしだ。
そう簡単に見つかるわけもなく時間だけが過ぎていったある日のこと俺はある街へとやってきたんだがそこに現れたのは意外な人物だったんだ。
そうそれはかつて俺と共に旅をしていた女戦士だったのだ。
何故こんな所にいるのだろうかと思っていると彼女は俺に声をかけてきたんだ。
「久しぶりだな」
俺なんかに会いに来ても怪しまれるだけではないかと思ったのだが、どうやら何か話したいことがあったらしい。
それで話を聞いてみるとこんな事を言ってきたんだ。
「実はつい最近この辺りで行方不明になった人がいる事を聞いてやってきたんですが知りませんか?」
確かにこの場所には新しい王国があり、その統治を任されている将軍がいるんだがそれがどうも怪しいようだという話だったんだ。
しかもその話を聞いたもう一人?いや、他の魔族たちも似たような感じだったみたいで全員から情報を頂いたというわけだよ。
その後、俺達はその国に向かったわけだがそこで俺達が見たものは悲惨なものだった。
なんとそこには沢山の人間が捕まっていたのだが、その中に俺の妻がいたんだよ。
俺は思わず叫んでしまったよ。
するとそこに現れたのが例の将軍だったのだ。
奴はこう言ったんだよ、
「よく来た勇者殿!」
ってな? 一体何を言っているのだろうかと思ったさ。