勇者の妻と俺と
その時の喜びと言ったらもう言葉に表せないほどだったよ。
「ねぇ、貴方狩りに行きましょう」
俺は妻の言葉に頷いた。
妻は森の奥深くへ入って行きいよいよ、夜になった頃、獣の鳴き声が聞こえ始めたと思ったら急に、目の前の茂みから何かが飛び出してきたのだ。
俺は思わず悲鳴を上げて逃げようとしたのだが、後ろから妻の声が聞こえ、振り返るとそこには何と巨大な熊が立っていたのだった。
驚いて腰を抜かした俺に妻が、言った言葉は意外なものだった。
「魔王を倒した人が何で熊ごときで怖気付いているのですか! 情けない!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中でスイッチが入ったかのように、恐怖心が消えていった。
そして、気がつくと体が勝手に動き出し、目の前にいた熊に向かって剣を振り下ろしていたのだ。
すると、あっという間に真っ二つになってしまったではないか、これにはさすがに驚いたぜ。
その後も次々と襲いかかってくる魔物たちを相手にしていくうちに、だんだんとコツを掴んできた俺は、次々に倒していったんだ。
その様子を見ていた妻は、満足そうに微笑んでいたよ。
「さすがは私の夫ね」
そう言って褒めてくれたので、嬉しくなった俺はますますやる気が出てきたんだ。
そしてついに最後の一匹を倒すことに成功したんだ。
これでようやく終わったと思ったが、まだ終わりではなかったらしい。
今度は別の化け物が現れたんだ、
その姿はまるで悪魔のような姿をしていて、俺を睨みつけてきたかと思うといきなり襲いかかってきたんだ。
しかし、その動きはあまりにも遅く簡単に避けることが出来たため、反撃に出ることにした俺は、剣を抜いて斬りかかったんだ。
「魔王様の仇、覚悟」
っと言いながら襲いかかってきたそいつの攻撃を避けつつ、カウンターを決めることに成功した俺は、そのままトドメを刺した。
俺は勝利の雄たけびを思わず上げると妻が抱き着いてきた。
こうして、俺達は無事に帰ることができたのだった。
数日後、街に戻った俺達は、国王に謁見することになったんだ。
そこで、今回の功績を称えられ、褒美として金一封と爵位が与えられただけでなく、名誉国民の称号まで与えられてしまった。
更には、王都内に屋敷を与えられることになったんだが、そこまでしてもらうわけにはいかないと思って断ったんだけど、
どうしてもと言われてしまい仕方なく受け取る事にしたんだよ。
最初は遠慮してたんだけどな、
いざ住んでみると快適だし、何より広い庭があるから、畑を作って野菜を育ててみたりして楽しむことができてるよ。
今では毎日が充実していると感じるようになったんだ。
これも全てあの魔法のおかげだな。
本当に感謝してるよ。
「旦那様、おはようございます」
そう言って笑顔で挨拶してくる彼女の名前はミリスというんだが、実は彼女は元魔王の娘なんだ。
そんな子がどうしてここに居るのかと言うと、先日起こった騒動の後に、俺と勇者ちゃんが結婚する事になった時のことだ。
その時に、せっかくだからということで一緒に暮らすことになったんだよ。
まあ、元々一緒に暮らしていたようなものだしな?
それに、彼女も俺のことが好きだと言っていたし、俺も彼女とならうまくやっていけると思ったからなんだよな。
そんなわけで、今に至るというわけなんだが、正直言って幸せすぎて怖いくらいだな。
だってそうだろう、こんな可愛い女の子がいつも側にいてくれるんだ。
「おはよう、今日もいい天気だね」
と返事をすると、彼女は嬉しそうに笑ってくれたんだ。
そんな彼女を見ているとこっちまで幸せな気分になれるんだよ。
ああ、やっぱりこの子を選んで正解だったなと思いながらも、ついつい見惚れてしまっていたら、その視線に気づいた彼女が声をかけてきた。
それを聞いて我に返った俺は慌てて取り繕うように言ったんだ。
そうしたら何故か笑われてしまったんだが、よくわからなかったので気にしないでおくことにしたんだ。
それにしても、今日の彼女の服装はとても可愛かったと思う、
フリルのついた可愛らしいワンピースを着ていて、髪型もツインテールにしてあったりするんだ。
ちなみに、髪の色は綺麗な銀色をしているんだよ、
瞳は赤い色をしていてとても綺麗だと思うんだ。
「うふふ♪ どうですか? 似合っていますか?」
そう言いながらくるりと回ってみせる彼女に、俺は正直な感想を口にしたんだ。
「ああ、すごく可愛いと思うよ」
そう言うと、彼女の顔が真っ赤に染まったような気がしたんだが気のせいだろうか?
いや、きっと気の所為じゃないだろう。その証拠に耳まで真っ赤になってしまっているじゃないか、
これは相当照れているに違いないなと思った俺は、彼女をからかうつもりでこう言ったんだ。
「どうしたんだい、顔が真っ赤だよ?」
と笑いながら言うと、さらに恥ずかしくなったらしく俯いてしまったのを見て、なんだか申し訳ない気持ちになってしまったんだが、
それでも構わず続けてやったんだ。
そしたらとうとう泣き出してしまって、流石にやりすぎたかなと思っていると、突然抱きつかれて耳元で囁かれたんだ。
「……好きです、貴方」
って言いながらキスしてきたんだぜ。
もうびっくりしちゃってさ、まさかそっちから来るとは思わなかったからさ、
つい固まってたら押し倒されちゃったんだ。
そこからはもう凄かったなぁ〜なんというかこう、勢いが違ったというかなんていうかさ、
とにかくすごかったのよ、
うん、マジでヤバかったわあれは、思い出しただけで興奮しちまうくらいだもん、
そりゃあもう最高だったとしか言いようがないよ、いやぁほんと最高!
って感じで語ってるのを聞いて俺はドン引きしていた。
だって、こいつがこんなに饒舌に語るなんて、ちょっと意外だったから、よっぽど嬉しかったんだろうなっと思いながら聞いていたんだけど、
途中でふと我に返ったらしく我に返ると、恥ずかしそうに顔を赤らめていたんだ。
その反応がまた可愛かったんだけど、 そんな、勇者ちゃんを見ていると俺はこの人が妻で本当に良かったと
心の底から思ったんだ。
その後、妻であるミリスちゃんとデートすることになった俺は、朝からテンションMAX状態で待ち合わせ場所に向かっていたんだが、
途中でふと気づくと隣に誰かがいることに気づいたんだよ。