転生と蘇生
たとえ相手が誰であろうと俺達は最後まで戦い抜くつもりだが、必ず勝ってみせるからな、見てろよ神様さんよ。
俺はあんたを倒して平和な世界にしてやる!
覚悟しろよ?
そう思いながら次の朝を迎える事になったんだよ。
それから数日後の出来事だったんだが……。
あれは夢だったのかと考えてしまう位には衝撃的なものを見たんだが、
それは俺達の世界が魔王の手によって滅ぼされる寸前の状況だったんだ。
(嘘だろ? どうして今までこんな事を忘れてしまってたのだろうか?
俺はどうかしちまっていたのか? それとも誰かに記憶を消されたかかのどちらかだろうな)
(まあそれは考えうるとすればあいつしかいないか、
恐らく俺の命を狙ってきているのはあいつなのだろうと今となってみればそうとも思えるしな、
だったらここから逃げるわけにもいかないんじゃないのかって話になるかもだけど、
俺の中ではな……だが、問題はどうやって逃げ出すかね、そう悩んでいる時だったんだよな)
俺は自分の体を見ることにしたのだが、その変わり果てた姿に驚きつつも落胆していた。
何せ身体中に刺青が浮かび上がり、さらには悪魔の様な角まで生えていたんだ。
(まあ今はこんな状態だがな……)
改めて鏡で自分の姿を確認することにしたんだが、俺はその後、部屋中に散らばった自分のゴミを片付けると今度は風呂に入ることにしたんだ。
何故かと言うと、体中汚れていたし、汗だくだったからな。
体を綺麗にするためだ、それに今なら誰も居ないしな、ゆっくりと寛げる気がするんだよ、
という事で風呂場に入ると服を脱ぎ去りそのままシャワーを浴びることにしたんだが、
何故か全然心地よくならなかったんだよ、逆に苛立ってきたからな。
(何故だっ! くそーっ!?)
という感じに思ったよな。
(どうしたと言うんだ一体)
と思った時には、いつの間にか意識を失ってしまっていたようだった。
(ん、あれ? ここはどこなんだ? 確か、風呂場にいたはずなんだが……?)
不思議に思いながら辺りを確認すると見覚えのある顔があったな、
それは元の仲間達だったことには少し驚きはしたがそれよりも驚くことがあったんだった。
何でかって、それはある人物が死んでいたのを見た時の事だった。
最初見た時は信じられずにいたんだよな、だってそいつは昔からの知り合いだったからな、
まさかその様な形で死ぬなんて思ってもみなかったしな。
だがしかし、死体に触ろうとしても出来なかったことに俺は戸惑いを隠せなかったな。
この時点でおかしいということは気づいていてもおかしくは無かったはずだったんだ。
何せ本来触れれるはずのものに触れないからな、もうその時点で予想がついたと思うが
俺の肉体が何か特殊なものに変わっていたんだよ。
そしてさらに厄介なことに、その力は自分の意思とは関係なしに発動する仕組みになっていたんだな。
だから俺の身体は自我が無いに等しい状態になっていったんだよ。
それだけじゃなく他の仲間まで手に掛けなければならなかったんだよな、面倒事は減らしたいけどもそうせざるを得えなかった事が苦しかったなぁ……
まあその時は仕方ないと思っていたんだけど、よくよく考えたらもっと早く気づくべきことがあったな。
それは俺の寿命の事だったんだけど、最近になり寿命は長く続くようになっていたんだけども、
どういうわけかとうとうその日がやってくるみたいだ。
「もう、限界か……まあ、仕方がねえな。
今まで楽しかったぜ」
俺は、そう呟きながらも自分の最後を迎える事にしたんだ。
(勇者ちゃんには申し訳ないけども、最後にもう一度会いたかったなあ)
と思いながら目を閉じると意識が遠のいていったんだ。
そして、目が覚めた時には自分の体が無くなっていたんだ。
(これでようやく楽になれるんだな)
そう思いながら俺の意識は消えていったのだった。
しかし、それから数日後の事だ。
何故か俺は生き返ったんだよ、それも完全に元の状態のままでだ。
(一体どうなってやがる?)
と思ったんだが、どうやらそれは神様の仕業だったようだな。
何でも俺が死んだことを悲しんでくれたらしく、俺を生き返らせてくれたらしいんだ。
「ありがとうございます神様、感謝します」
と心の中で呟きながらも、俺は再びこの世界で生きていくことを決めたんだ。
(今度こそは後悔しないように生きていこう)
そう思いながらな。
それから数年後、俺は勇者ちゃんと結婚する事になったんだが、その結婚式の日が今日なんだわ。
まさかこんな形で結婚することになるとは思ってもみなかったがな、まあこれも運命ってやつなんだろうよ。
(さてと、そろそろ行くか)
と思い立ち上がると、目の前に一人の女性が立っているのが見えたんだよな、
そいつは俺の元彼女であるミリスだったんだよ。
そして俺に話しかけてきたんだ。
「久しぶりね……元気だった?」
と言いながら微笑んでいたのを見て思わずドキッとしたよな。
何せ美人だからな、見惚れてしまうのも無理はないだろう。
そんなことを考えていると彼女が口を開いたので耳を傾けていると意外なことを言い出したんだ。
それは俺が死んだと思っていたということらしいんだが、
「まさか、お前まで俺と同じ世界に来ていたとはな」
と言うと彼女は微笑みながら答えたんだ。
「ええ、そうよ。私もあなたと同じように転生してきたのよ? ただ、あなたの場合は私が死んだ後にだけどもね?」
そう言われて初めて知ったんだが、どうやら俺が死んだ後すぐに彼女も亡くなっていたらしいんだよ。
しかも原因は自殺だったらしくてな、まあ俺も人の事は言えないが……それでその後どうなったのか聞いてみると、
彼女は魔王に殺されたらしいんだ。
なんでも彼女を殺した理由は彼女が邪魔だったからという理由だったらしいんだが、その理由がまた酷いんだよな。
何でも彼女が勇者として選ばれた事が気に食わなかったからという理由だったそうだ。
「え、それだけの理由で?」
と思わず聞き返してしまったんだが、どうやら本当らしいんだ。
しかもそれだけではなく、他にも色々と問題があったらしくてな、
例えば彼女が勇者として選ばれた後すぐに魔王討伐の旅が始まったわけだが、
その際に彼女は仲間から酷い扱いを受けていたそうだ。
(まあ無理もないだろうな)
何せ相手は元魔王の娘だからな、普通の人間からすれば恐怖の対象でしかないだろうからな。
そんなこともあってか彼女は精神的に追い詰められてしまい最終的には自殺してしまったそうだ。
そしてその後俺も後を追うように死んでしまった訳だが、まさかこんな形で再会することになるとは思いもしなかったよ。
(それにしても何でこいつがここにいるんだろうか?)
と思ったんだが、聞いてみることにしたんだ。
すると意外な答えが返ってきたんだよ。
「実は私ね……あなたの事が好きだったのよ」
って言われてしまって、正直驚いたよ。