第13話 連続する罠
その後も奇妙なことは連続で起きた。
内定者に対する最初の説明会会場では、今の時点での希望進路を記入するアンケートが配布された。自分の名前が印字されたマークシート用紙を手にした時、誠はすぐに異常に気づいた。
本来空欄であるはずの志望部署の欄にはすでに、パイロット志望の欄に印がついていた。
誠はその事実を偶然かミスかと思いこもうとしたが、これまでの嵯峨と言う男の存在を思い出してなんとなく察しられて少しムキになった。
必死に消しゴムで消そうとしたが、完全に名前と同時に印刷されているようで全く消えない。そんな誠のマークシート用紙を会場の『東和宇宙軍』の制服を着た女子職員が誠の意思を無視して回収していった。
『これは……罠だ』
そう思った誠は諦めて誠はそのままパイロット養成課程に進むことになってしまった。
こんな明らかに『誰か』の意図が見え見えで新社会人生活が始まったことに、誠は両親に不安をなんとか説明しようとした。
何かを企んでいる。それは嵯峨と言う男である。それは分かる。だが、なぜ彼が誠にこんな罠を仕掛けてくるのかそれが分かりかねた。
下手に理系なだけに理由もなく罠を仕掛ける人間がいないと誠は思い込んでいた。しかし、嵯峨はあえて誠を罠にはめていた。
口下手で『理系脳』の誠に嵯峨が明らかに罠として誠を東和宇宙軍のパイロット候補にしようとしているのかを両親に正確に説明することなどできるはずもなく、二人とも誠の進路が決まったことにただ喜ぶばかりで、誠の『悲劇的』な社会人人生は始まってしまったのである。