妄想加害者
急にガッと後ろから何かで殴られ、地面に倒れた。
倒れながら地面の上で仰向けになり、咄嗟に腕を上げて、二撃目を食らわないように追撃に備える。
「やっと見つけた、この野郎!」
知らないおっさんだったが、金属バットを手に俺に敵意を向けていた。
「だ、誰だ、あんた」
「とぼけるんじゃねぇ、人の家をちょろちょろ覗きやがって。てめぇの足跡がくっきり残ってるんだよ」
「は? 俺、あんたの家なんか知らないし、あんた、誰?」
「しらばっくれるじゃねぇ」
おっさんは、地面に倒れた俺をさらに叩こうとしが。
「ガッ!」
別の人影が現れて、おっさんを取り押さえた。
制服の警官だった。
「お、おい、離せ、捕まえる相手が違うだろ」
「暴行の現行犯です、おとなしくしなさい」
どうやら、俺は助かったらしいと警官に押さえつけられながら暴れるおっさんに警戒しつつ、立ち上がり、パンパンと服に付いた埃を払った。
そのおっさんは近所でも有名な迷惑おじさんで、自宅を誰かに覗かれていると
何度も警察に被害妄想の電話をし、その日も電話を受けた警官が来たのだが、不審者はいなくて、周囲を一応見回って帰るところだったのだが、たまたま近くを通りかかり、そのおっさんに勝手に犯人認定された俺が襲われているの見て助けてくれたというわけだ。一応、救急車で病院に行き、検査を受けたが、命にかかわるような怪我はなく、おっさんは傷害の現行犯で捕まったが、あの日から俺は、あの捕まったおっさんが俺に逆恨みして、今も背後から金属バットで襲ってくるんじゃないかという恐怖を抱くようになり、常におっさんに見られている恐怖に襲われるようになり、今度は俺がたまたますれ違ったおっさんをやられる前にやってやろうと襲ってしまい、俺は現行犯で捕まった。