友達
鷹祭さんは更に質問してきた。
「好きなジャンルは? 推理小説?」
「んー。特に好き嫌いはないかな。なんでも面白ければって感じ」
「おー。そっかそっか。私はミステリーをよく読むよ」
「ミステリーか。国内の?」
「海外のも読むかな」
「マジで? え、好きな作家さんは?」
彼女は指折り数えながら何人か挙げた。
「嘘だろ……。キモいくらい好みが被ってる」
「キモいって……。ってか踊橋君もクリスティーとか読むんだ」
「巨匠だからね。流石に通ってきてるよ。いや~なんか嬉しい。こんな身近に語れる相手がいたとは」
「私も私も。うちのクラス、本好きな人あんまいないからね~。これはもしかしてお互いにとってのベストパートナーを見つけてしまったかな?」
「かもしれない」
彼女は一瞬何かを考えてから言った。
「へいパートナー」
「どうしたパートナー?」
「本を友達に貸して、返ってきた時に帯が無くなってたらどう思うよ」
「うわぁ……それは最悪。もうその友達には貸せないかも」
彼女は嬉しそうに顔をほころばせた。
「おぉ分かってくれるか! 君なら分かってくれると信じていたよ。いや、小学生の時なんだけどね? 友達に貸してた本を返してもらった時、本に元々ついてた帯が無くなってたから訊いてみたのよ。そしたら『邪魔だったから捨てちゃった』だって。なぁんで勝手に捨てるんじゃぁああ!」
地団駄を踏む鷹祭さんに、僕は深く頷くことで同意を示した。
「それはキレてもいい。まぁ僕は友達いたことないからそんなことになる心配は無いんだけどね。ははは」
「笑えないよ……。別にいいじゃないか。今日から私が友達になるよ」
「月いくらですか?」
「お金なんて取らないよ!? 私のことをなんだと思ってるんだ」
「なんちゃらフラペチーノ系女子」
「なんじゃそりゃ。まぁいいや。あ、ヤバ。昼休み終わりそう。じゃ、また話そうね踊橋君。バイバーイ」
彼女は僕に向かってにこやかに手を振りながら自分の席に戻っていった。