バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

寄生虫

気分が悪くて、トイレで吐いた。すると吐いた汚物の中に緑色でぴくぴく動く奇妙な生物を見た。
気味が悪くてすぐに水に流してしまった。後から考えると汚くてもテッシュかなにかでつまんで確保しておけばよかったと思ったが流してしまったものはしょうがない。
俺の話を聞いた医者は顔をしかめていた。
「今時、お腹に寄生虫ですか」
「信じてないのか」
「なにかの食べかすを生き物と、見間違えたんじゃないですか」
「いや、あれは生きてた。食べかすなんかじゃない」
「分かりました、寄生虫を殺すお薬を出しておきます。それと胃カメラの予約を、う、ウゲッ」
お医者さんは急に気分が悪そうに吐いた、口から胃液と一緒に何か大きな緑色のものが顔を出した。
「んっ」
巨大な青虫の頭のようなものが口から飛び出そうになっていた。
「せ、先生、大丈夫ですか」
お医者さんは、それをごくんと飲みこんで、何もなかったような顔をした。
「だ、大丈夫、大丈夫。ごめんね、ちょっと驚かせちゃったね」
俺が医者の口に見たのは俺が吐いた生き物の巨大版のようだった。
もしあれが、俺の腹の中で育っていたら、この医者のように内臓に収まりきらず口から出てきそうになっていたのか。俺は何かやばいと感じ、即退散することに決めた。
「すみません、吐いて楽になりましたから、もう帰ります」
「何を言ってるんだ、君は。ちゃんと診察しないと」
ふと気が付くと俺の逃げ道を塞ぐように看護婦たちが立っていた。


しおり