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生霊

彼は悪人ではなかった。いわゆる大金持ちのバカ息子というやつで、無駄に速い高級車を手にれて、追突事故を起こした。
しかし、父親が有能な弁護士をつけたらしく、事故を起こした相手の車の運転手にも瑕疵があったとして、また示談金を多額に用意して罪を逃れて自由になった。
だが、俺には見えていた、彼の後ろに恨めしそうに憑いている相手の青年の姿が。その事故で死にはしなかったが、背中を強く打ち、一生車いす生活だという。恨まれ生霊が憑りつくのも当然だろうと思う。ま、呪い殺す怨霊ほど強くなさそうだから、俺は放っておくことにした。
大金持ちのバカ息子には、少し不幸になって他人の不幸が理解できるようになってほしいと思った。

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