ひんやりした?
「ね、ね、ひんやりした? 今、絶対、ひやっとしたよね?」
「当たり前だろ、もう少しでホームから転落するところだったんだからな」
「怒った? 幽霊なんているわけない。心霊写真なんてみんな合成とか粋がってたくせに」
「まさか、死んだお前に憑りつかれるなんて思わなかったよ」
「なに? 死んだ彼女が帰ってきてうれしくないの? 映画なら、号泣の再会シーンじゃない?」
「事故直後の血まみれの姿で迫られて、喜ぶかよ」
「見て、見て。周りの人私が見えないから、あんたがひとりでブツブツ言う怪しい人に見られてるわよ」
「うっせ、さっさと成仏しろ」
「いやよ、あたしがいなくなった途端、新しい女作ってイチャイチャされるの、嫌だもの」
「おいおい、俺に一生独身でいるように憑りつくつもりか」
「それもいいかも、死んだ彼女のことが忘れられず一生独身ってのも、かっこいいんじゃない」
「おいおい、冗談はやめろよ」
「さて、冗談かしら?」