不愉快なニュース
世の中には、奇々怪々な事がごろごろしている。
これも、その一つ。
それはとても不愉快なニュースだった。
子供が行方不明になって捜索中の両親がテレビ局の取材を受け、涙ながらに無事に見つかってほしいと訴えているニュース映像だった。
だが、私には見えていた。首に赤い締め跡を持った男の子が、その両親の背後に無言で立っているのを。
母親の説明では前日遊びに出かけて、夜になっても帰ってこなかったので警察に連絡したと。
だが私には分かる。ニュース映像で両親の後ろにいるその子が見ているのは母親で、どこか悲しく恨めしそうで、もっと生きていたかった、苦しかった、そういう負の感情を映像越しでも感じた。私には見える力がある。だから、その両親たちが気づかない子供の霊が見えていたのだ。
ほとんどの人がその両親のニュースを忘れた頃に、子供殺害の容疑でその母親が逮捕されたとネットのニュースで知った。
埋められていた子供の遺体が、最近あった大雨の影響で起きた土砂崩れで地表に出てきて、その遺体を調べたら、少年の爪の間に抵抗した際にもがいて引っ掻いた母親の皮膚組織が付着していてそれが殺害の証拠になったと。
そう、見えるとは言っても、実際には何もできない。たとえ、あのニュース映像を見た直後に警察に母親が子供を殺したと訴えても誰も信じなかっただろう。