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卒業旅行

卒業式後の春休み、皆それぞれに進路が決まっていて、進学就職等の準備はあるが、時間に余裕があるということで気の合う野郎で集まって卒業旅行に行くことになった。
単純な一泊程度の温泉旅行である。旅費を安くするため三人で四人部屋を借り、その夜は酒を部屋に持ち込み、思い出などを語り合った。で、話のネタが尽きたころ、一人が、自分の趣味について語りだした。
「俺、小学生の頃から自分の切った爪を、インスタントコーヒーの空き瓶に貯めてるんだ」
「おい、汚ねぇな」
「そういうのなら、俺もガキの頃、自分の瘡蓋、空き缶に入れて集めてた。早く取りたくて、まだ治りきってない瘡蓋をめくって出血したことある」
「お前だって、そういうのあるだろ」
「俺は、その・・・」
「なんだ、このさい言ってみろ」
「人が死ぬ瞬間の悲鳴を集めてるんだ。ちょうど、今日みたいに」
「は、なに言ってるんだ」
「みんな気づいてないの? 免許取り立てのお前が車を運転して事故って、みんな即死だったんだよ」
「何言ってるんだ、ん、それより、お前誰だ?」
「あっ、やっと俺のことに気づいた?」
「だ、誰だ、てめぇ!」

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