傘をたむける
その致死性の高いウイルスの拡大は恐ろしく早く、病院が足りず、臨時の仮設の救護施設として、地域の学校が利用されて、また遺体を丁重に弔っている余裕もなく、校庭に穴を掘り、そこに遺体を埋めて急場をしのいでいた。で、墓石も何もないのはかわいそうと、誰かが故人の傘を墓石代わりに置き始めて、学校の校庭は色とりどりの傘で埋まっていった。墓石のように重くもなく、しっかり固定されていないから強い風が吹くと魂が天に帰るように空に舞っていた。しかも、その傘を供えた者もウイルスにやられていて、ウイルスの付着した傘はそのまま遠くに飛ばされていった。
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