下山
「かなり、雪が強くなってきたわね。早く下山しないとやばいかも」
「分かってる、コンテスト用に、少しでもいい写真が撮りたかったの。粘って悪かったわね」
「ん、誰かついてくる足音がするって? 誰もいないわよ」
「さ、急ぎましょ」
でも、私たちは下山できなかった。もともと登山届なんてものは出してなかったし、山の駐車場から少し山の斜面を登ったつもりだった。だが、春になり、私のカメラだけがみつかった。そのカメラに写っていたものを見て、私たちの親戚が大騒ぎしたようだが、下山できていない私には関係のない話だった。