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極楽行き

ふと気がつくと俺は極楽行きの切符を手に地下鉄に乗っていた。車の迫りくるライトの光と急ブレーキを聞いたような気がするから交通事故で死んだと思う。途中、地下の幾つかの地獄の駅に停車し、地下を巡って地上に出て天上の終点の極楽に近づくころには、乗客はほとんどいなくなっていた。
人間は嫉妬やウソなどの何らかの罪を犯している者ばかりということなのだろう。俺の場合は臆病者で極度の人見知りのおかげで地獄の駅に下ろされるような罪が全くなかったのだろう。
終点の極楽に着いたとき、俺は極楽での生活に期待しながら電車を降りた。
極楽は何もない、退屈な世界だった。地獄に落ちる罪がない者が住むということは、欲が一切なく、何もなくても生きていけるということで、俺は、極楽で何もすることなく、早く転生できないかと願いながら、地獄行きの方がマシだったと思えるくらい死ぬほど退屈で何もない日々を極楽で送った。

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