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昔の制服

厳粛な卒業式は無事に終わり、あたしたちは自分たちの教室に戻っていた。
誰かが先導したわけではなく教室の黒板には、ありがとうやあばよなどのメッセージが次々に書き込まれていた。
「ん、なに?」
彼が怪訝そうにしているのを見て、あたしは卒業式の雰囲気にあてられて涙目だったが、ついあの子のことを話したくて声をかけた。
「ね、あんた、見なかった? 卒業式の一番端に昔の制服着た女の子が座ってたの」
「あ、お前も見た?」
やっぱり、見てたか。
「他にも気づいた生徒がいたみたいだけど、卒業式のあの雰囲気で誰も騒がなかったな」
「うん、みんな気づかないふりしてた。ただみんなと一緒に卒業式に出たいだけかもと思うと、あたしも何か泣けて来ちゃって」
「けど、俺、あの子を見てから、何か肩が重くて、もしかして連れてきちゃったかな」
「あら、いいじゃない、あんた前々から彼女が欲しいって言ってたじゃない」
「いや、俺はお前みたいな、生きてる可愛い子の方がいい」
「可愛い? なにを、いまさら」
「俺、いままで機会がなくて言ってなかったけど、わりと本気でお前のこと可愛いと思ってたぜ」
「心にもないことを。あ、そうだ」
あたしは急に思いついた風を装って携帯を取り出して構えた。
「肩が重いのなら、いまあんたを撮ったら何か写ったりして」
本音は、この機会に、彼がひとりで写っている写メが欲しかったからだが、カシャッと撮った画像を確認して、あたしは黙ってすぐにそれを消去した。

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