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租借音

男子トイレの大用のトイレは薄い壁に囲まれた個室である。外の様子はまるで分らないがその壁は薄く、誰かが入ってくれば音で分かる程度の薄さである。
だが、外は見れないし、すぐ仕事に戻らなければならない状況でもないので、便座に座りながら、のんびりとネットにつなげてスマフォを覗いていた。つまり、サボっていた。
すると、バタバタと慌ててトイレに駆け込んでくる足音がした。急にお腹が痛くなったのだろうか。それにしても、騒がしい。慌てて俺のいる個室の隣に駆け込んだようだ。
「た、助けて・・・ひぃ、い、痛い・・・」
グシャ、バキッ、ムシャ。
「ん?」
柔かい物を咀嚼する音が男子トイレに響いた。となりの個室からだった。
何だと、スマフォをポケットに、ズボンを履き直し、外の様子に注意する。ムシャムシャと何かを噛む音がしていた。すぐトイレの戸を開けずにその音の正体を探ろうとはしなかった。何かやばい。そう判断して、俺は息を殺し、自分の気配を消したが、租借音が終わると、バタンバタンと男子トイレの個室を端から調べる音がした。俺のいるトイレの戸も開けようとしたが、カギが掛かっているので開かない。しばらく、開けようとガチャガチャやっていたが、諦めたのかすぐ静かになった。が、視線を感じて俺はトイレの上の方を見た、トイレの上の方には隙間があり、そこからのぞき込んでいる奴と目が合い、そいつがニタリと笑ったのを見た。そして、見つけられた俺は逃げられずに、そいつに食われた。

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