第3章の第133話 どうしようもない問題60 9月(1)アイちゃんの偽者!?
☆彡
――過去から現在に返り、アンドロメダ王女様が、こう呟きを落とす。
「――空白の期間とは何なのじゃ!?」
それに対して、スバル(僕)が聴いてて、もの知りそうな、エメラルティさんに、こう尋ねたんだ。
「エメラルティさん。アンドロメダ王女様が、その空白の期間……って何と!?」
「……」
☆彡
【――そのスバル達が、滞在しているホテルの前では、箒を持ったアイちゃんがいて、その顔を見上げていたものだった】
「――……」
【彼女が、今、何を思い、何を考えているかは、定かではない】
【その肢体が、本物か、氷の分身体かもわからない】
【そして、複雑に絡み合ったその事件を遡る事、数時間前――】
☆彡
【――ヒースの元にも、届いていた不審な報せ。それは、同じプロトニアの仲間達からもたらされたものだった】
「――なにぃ!? アイちゃんが!?」
近くには、男性と女性のプロトニアがいたのだった。
「ああ。信じられんぞあの女!!」
「今日、地球人類がこの星に着たばかりでしょう!?」
「ああ、そうだね」
「そこで、ちょっとしたいざこざの暴力事件騒ぎがあっていて……」
――回想。
――どこかの居住区域。
『――何だァこの野郎!? やるか!?』
『あぁ、やったるわ!!』
それは、星王様が用意してくれた場所の外だった。
当然、そこには、何も知らない民間人も含まられていて。
地球人同士の喧嘩が、突如として、勃発したものだった。
『だいたい、俺の取り分なんかよりも、お前の方が多いぐらいじゃねぇか!?』
『何を!? それをお前だって!?』
『もう辞めなよ!』
とそこへ、美味しそうな食べ物を持った子供がいて、それを見て笑ってたものだった。
『あはは! 何あれ!? 見てあれーーッ!?』
『フフフッ、おかしいよね!!?』
だが、地球人類にとっては、その声は、その何を言っているのか、言語体系がまったくわからなかったので……
『『『……?』』』
『今、なんて……』
『さあ?』
『だが……、バカにされた事だけは、確かだぞ!?』
カチンッ
と怒ったものだった。
そして、その美味しそうな食べ物を持った、その星の子供の前に、移住してきたばかりの地球人類が立ち塞がり。
これには、その数人の子供達も。
『……え?』
☆彡
「――殴ったり、蹴り飛ばしたり、したのかい!?」
「ええ、そこへ、アイちゃんが来てね……」
――回想
アイちゃんが着て、寸分たがわず、その手に持っていた箒で、その地球人類数名の、意識を刈り取ったものだった。
バキッ、バキッ、バシッ
これには、たまらずその場で意識を失い、倒れ伏すものだった。
「……」
嘆息するアイちゃん。
この子は、ほとんど声を発さないので、正直、その何を考えているのかわからない、
だが、運悪くも、それを別の地球人人類がいて、目撃していたものだった。
「……」
☆彡
――これには、ヒースさんを推しても。
「――おいおい、どこかで必ず、『確執が起こる』ぞ……!?」
「もう起こってるわよ」
「ああ」
「大丈夫かなぁ? これ……まだ初日目なんだよ……」
☆彡
【星王アンドロメダの御所】
【コウ】
――一方、星王アンドロメダの御所では。
「……」
「……」
対面の見えざる相手と話を交わし合いつつ、その碁盤の様子を魅入る。
それは、コウだった。
コウとは、4つの石と4つの石が絡み合い、どちらも、取っては取られる状況だった。
これを、囲碁のルールでは、コウと解く。
☆彡
――これには、ヒースを推しても、そのアイちゃんと、一度はきちんとした形で、話し合う必要があり。
「――マズいな……非常に……」
「……」
「……」
「一度は、キチンとした感じで、そのアイちゃんと話し合う必要がありそうだ。
何で、こんな思い切った行動をとったのか!?」
☆彡
「――ほぅ! 分身体魔法と、その本人そっくりになりきれる魔法か……」
そこには、3人のアイちゃんのそっくりさんがいた。
「……」「……」「……」
「さしずめ、影分身の術、変化の術、と言ったところか。クククッ」
「……」「……」「……」
「行けッ! お前達! そして、ゆくゆくは、スバルとかいうガキを、誘導して、地球人類の手で、殺せ!!」
「わ」
「あ、あいつ、喋れないから……その感じでな」
「……」
3人のアイちゃんは、その自分たちの顔を見て、互いに頷き合い、行動を起こすものだった。
「さーて、俺も入れて、数人に化けるか……。上手く、場所と、時間帯を、ズラしていって、
地球人類と、アンドロメダとの、仲違いを誘発させてやったぜ!
その人を、信じきれなくなっていき――勝手に『自滅』してしまえ!
ハハハハハッ!」
怪しい男の口嗤(こうしょう)が、どこかで上がるものだった。
☆彡
ジリッ……
偽者のアイちゃんの分身体は、周りのプロトニアの人達により、扇状に囲まられていた。
「少々やり過ぎだぞ!?」
「……」
「何もここまでする必要がないんじゃない? 今、催眠魔法を使える人を呼んでいるわ!」
(それを、使われたら、マズいのよ。それも、刈り取らなきゃね……)
顔はそのまま、唇だけが、ほくそ笑む。
「何だって、こんな『危害を加える必要(?)』がある!?」
――とここで、ヒースさんが、合流してきて。
「――君の行動には、目に余るところがある!! いったい、僕たちのいない間に、何が起こっていたんだい!?
君の性格を考えるに、これは、何かあるんだよね!?」
「……」
(引き際だな)
それが、偽物のアイちゃんの心の声だった。
その手に持った箒を一扇ぎし、冷気の旋風を起こし、キラキラと氷の粉が辺りを覆い隠す。
「「「「「!」」」」」
バンッ
と氷塵が爆発し、被害を与えないようにし、全員の視界を奪ったのだった……――
「――なっ!?」
「氷塵!?」
「どこへ!?」
ピィ~~♪
その時、誰かが口笛を吹き、風を氷塵の中に送り込み、
ピィ~~♪ ピィ~~♪
次々と風の気流が駆け巡り、四方八方から送り込み、爆散させる。
キラキラ
と舞い上がる氷の粉。
皆は、その眼で、あのアイちゃんを追うが……。
「……いない……」
「気配も、完全に消しているな……」
「これは、逃げられたねぇ~」
さっきの口笛の人が、のんきにあっけらかんとしていたのだった。
【――その身内内に、この時すでに、間者が紛れ込んでいて、事態はより複雑になって、混沌と化していく】
☆彡
フッ……
闇夜を縫うように、ビルからビル伝いへ、壁を蹴り、慣れた手つきで飛び、駆け抜けていく。
「……」
その時だった。
!
冷たく、憤怒を押し殺しているアイちゃんが、惑星ソーテリアを影に、冷気を纏った箒を携えていたのは――
「――フッ」
ドォンッ
氷瀑が炸裂したのだった。
だが、当たる間際、確かに偽者(それ)は、笑っていた。
☆彡
――突如として、戦闘が勃発した。
それは、意識を裂くには、難しく、相手もまた手練れだった。
「……」
「……」
氷瀑。
ドォン
無詠唱からの氷瀑だった。それも、2人同時に。
――そのスバル達が滞在しているホテルを、見上げる1人の少女がいた。
「……」
その手に箒を持った少女。そう、アイちゃんがだ。
その少女の身体が見る見るうちに、罅割れていき――そこへ強風が吹き、パリィ―ン、サラサラと氷の結晶になって、天高く運ばれていくのだった……。
☆彡
【星王アンドロメダの御所】
【二眼の眼形】
パチンッ
白石が打たれる。
「フム……『2眼の眼形』か……。さしずめこれは、愚女(ぐじょ)と……」
そう、2眼の眼形を現わすのは、愚女アンドロメダ王女様と愚男スバルだ。
「……」
星王アンドロメダは、暗がりの人物を伺う。
それは、シルエットでしか、何もわからない。
そして、その様子を俯瞰する少女がいた。そう、箒を持った少女アイちゃんだった。
「……」
そのアイちゃんが、どこか遠くを見るようなものだった。
それは、まるで、遠い遠い宇宙の彼方を見るようであって。
☆彡
【尾行するアイちゃん】
ゴゥンゴゥン
それは、機械室の低い唸り声のようなものだったわ。
「……」
どこかの天井裏の点検口の覗き穴から、その様子を見ていたの。
そして、どこかで、紫色の瞳が、その目を開ける――
「……」
☆彡
――これには、その一同も気になり。
「「「「「――空白の期間って!?」」」」」
それに対して、美人三姉妹のどなたを推してみても、凄い困り顔で。クリスティさんが、スバル君が。
「さあ?」
「え?」
サファイアリーさんが、アユミちゃんが。
「わかんないしね!? なーんにも!?」
「え?」
エメラルティさんが、ミノルさんが、アヤネさんが。
「だって、そもそも、先にそれを見ようとしてた邪な連中がいて、感傷の思いのヨーシキワーカさんが、『もうダメ』って唸ったもの!」
「それってつまり……」
「わかんないの……何も……?」
とこれには、美人三姉妹のどなたを推しても。
「「「うん、実はそうなの」」」
「「「「「なーんだガッカリ……」」」」」
――とここで、物珍しくもシャルロットさんが。
「――そうなって、当たり前なんですよ」
「?」
「これは、某作家に限らず、すべての作家に等しく言える事なんですが……。
横から見る感じで、その作品を台無しにする感じで、掠め取っていて、『無断で搾取』されていて、ハッキングを受けていたものなんでしょう?」
「ええ、そうよ」
「しかも、偽詐欺電話詐欺も、相次いでいて、
その市内や周辺の街中で、どこか遠くの街中まで、取り次いで周っていて、知り合い関係を通じて、法務部という名の。
その某作家の未公開のメモ帳などを見る等して、使って、
あの月見エビバーガーオーロラソース社みたいな所や、他の所にも対して、
これは、責任問題だからだと脅して、そこから、不正送金による、抜き出しモノの、やり取りなんかが行われていた……と見るべきです」
「……」
「特殊詐欺とは、『だいたいがそんな手口』なんですよ。
TV報道機関を通して、そうしたものは、中々開示されずにいて、邪な大人たちがいて、揉み消して周っているんです。
だから、民間人の人達の中には、意外とこの事を、知らない人がやたらと多いわけなんです。
だから、知らないこそ、付け入った感じで、ドンドンとやられていった訳なんです」
フゥ……
と嘆息してしまうシャルロットさん。
「そこで騒ぎが起きていた以上、必ずどこかで、某作家みたいな人もいて、
そうした怪しい動向を怪しみ、そこに詳しく書き出そうと思ってみても、
その家族内の身内連中を遣わされていて、
USBメモリーや、他の物が盗まれていたり、壊されていたりしてて、感傷の思いだったハズです。
旧ノートパソコンや、ホログラム映像出力装置付きマウスにしても、そうなんですが……。
ウィルスセキュリティソフトなんて、『まったく効かず』……。
1つは、記録媒体用円盤を、無断でインストールされていたり、
もう1つは、金属製のウィルスの入ったUSBメモリーを、USBハブに差されていて、
そしてもう1つは、携帯電話番か、アカウント伝いを頼りにして、ハッキングを介して、バックドアを予め設けていて、
そのウィルスセキュリティソフトが護っている、第二次層、第三次層のファイアウォールを素通りして、
第一次層の、OSシステム、その機器そのものに、不正アクセスなんてできるものなんですから、
ちょろいんですよね?
(ハッキング機器の発祥先は)軍事関係からの元々からの出発点だった以上、
信号を飛ばしまくって、攻撃できるように、そうした作品を台無しにさせるようにして、
いつでも、自分たちの身の上の安全を保障し、防衛できるように、予め生産されていたものなんですからね!」
「……」
「当然、某作家たちにしてみれば、書きたくても書けない作品になっていて終い、
ついには、誰が、その書きたい作品を書けるのでしょうか!?
無理なんですよね? こんなヒドイ事は……。
当然、最後なんかは、打ち切りレースなんかが、始まるものなんですよ?
それ、わかってて、そちら側の人達は、それを狙ってて、やってた類なんですからね?
その責任なんて、いったい、誰が負えるものなんでしょうか!?」
つまりは、打ち止めである。
シャルロットさんは、愚痴った感じで、こう独り言を零すのだった。
「まぁ、しっかりと息の根が止まっているでしょうし……。3か月間を超えた時点で、もうアウトなんですからね……。
その某作家にしてみれば、唯一無二の活路があるとすれば……。
その失ってしまった作品性を、一部切り離した感じで、『戒めの特別版』として取り扱い。
正史のストーリーとは、少々切り離した感じで、進めていくしか、もう手が残されていないでしょう……。
後は、そうした伏線をストーリーの随所に撒いていって、その後でぐらいで、伏線回収による流れでしょうね」
これには、美人三姉妹。スバル君たち。アンドロメダ王女様が聴いていたのだった。
「……」
「……」
「……」
とここで、サファイアリーさんが。
「……まぁ、だから、こんな事はいつも毎回ぐらいに、このクソみたいな社会の中で、日常茶飯事ぐらいになって、続いていて、
前の人がやられたら、また今回みたいなこいつみたいな奴に、
で、やられたから、その上の人達には、いくらか一言も文句も言えないみたいなものだから、
今度は、こいつみたいな奴が、自分よりも力の弱い、入ってきたばかりのやつに、その『洗礼』みたいな感じで、
今度はまた別の人に、こんな嫌味なことになるぐらい、問題工作作りを繰り返して、続けていたって訳よ。
で、段々と上の昇格に、昇給に上がっていて、
下には、そうした骸(むくろ)なんかが、転がっていた訳……。
そこには、何も言い返せない甘ちゃん達や、心優しい僕ちゃん達、
そのいくらか使い勝手が良くて、この世の中の中でも、いくらか使い回しのできる社会の部品をね。
役所とか、幹事とか、上の部署の人達なんてのは、そこで言いように油をかいていたわけよ」
これには、アユミちゃんも。
「なーんか、どこの世界でもありふれていて、現実味を帯びていて、ありきたりな話で、豚さんみたいな人達もいるんだね?」
「ええ、そうよ!」
ブヒーッ、ブヒヒーッ
この宇宙のどこかで、その脂ぎった顔の豚さん達がいて、呻いたのだった。
「――まぁ、あのカジノの中の話を続けましょうか?
確か、職業訓練校時代の8月だったわよね?」
これには、エメラルティさんも。
「うん、そうね!」
「じゃあ、次は、9月の頃の調査だったわね――」
★彡
【カジノ】
――アストル選手は、こう語るものだった。
『――とここまでが、判明している限りの8月ぐらいの話なのです』
とこれには、アサヒさんも、サクヤさんも、イチハ様も。
『しかし、『伝言ゲームの誤り』に』
『『複数の人為的ミス』作戦による、間違った感じになるようにして、どこかで変に取り次いで周っていき』
『それが、いつしか、誰にもわかんなくなるような感じにしていく流れで、『ヒューマンエラー』の取次ぎ話だったやなんてね!』
フゥ……
とこれには、トヨボシを推しても、重い溜息をつかざずにはいられなかった……。
アストル選手は、続けて、こうも語るものだった。
『まぁ、誰が、こんな手の込んだ事を考えたのか、嫌味な感じで!! 間違った感じの問題騒ぎの発祥先だった訳だ!!』
これには、アサヒ、サクヤ、イチハ様を推しても。
『……』
『……』
『……』
無言のだんまりであって、口をついて出た言葉は――
「――誰が、考えたんや!? こんな悪い事わ!?」
「ドクターイリヤマと、ドクターライセン2人の発祥先だ! 君達は、この言葉を覚えているか!?」
★彡
【どうしようもない問題=特殊集団詐欺事件】
【姉妹校 設備管理科の教室】
それは例の如く、医療に携わる権威ある2人が、ホログラム映像越しで、そう唱えてきた。
『――皆さんが本校を出て行った後、いつ起こるかはわかりませんが、ある問題が起こります』
『それは『どうしようもない問題』というやつで、今までに勝った人は、誰もいません』
『……僕の身にも同じ事が起こりました……』
『あぁ、あの時言っていたのは、こーゆう事なんだなぁ……ってさすがに思いましたよ……!』
『……それは、いつ、どこで、誰に、どのタイミングで降りかかるかわかりません……!』
『でも、これはチャンスですよ皆さん!』
『それはどうしようもない問題というやつで、今までに勝った人は、誰もいませんから……!』
『僕が知る限り、誰1人としていません……!』
『ですが、もしもこれに勝てたら皆さん、毎月の給与が上がるんですよ!』
『これはそうした問題なんです!』
『人生で一度きりの大チャンスなんですよ!』
『……もしも、何か困った事がありましたら、こちらにいるドクターイリヤマに取り次いでください』
『僕の時も、そうやって助かりました……』
『………………ンッ!?』
それは一瞬の映像だった。
何かしらの問題が起こり、両者のパターンに分かれるものだ。
前者、先生に取り次いだ者は、助かり、先生もにっこり顔で、しかもお金まで得ている。
対して、先生に取り次がなかった者は、助からず、鬼の形相となった先生も怒っていて、その人からお金を盗り立てている。
それは一瞬の一コマだった。
(何だ今の……!?)
【――それはサブリミナル効果だった】
【サブリミナル効果とは】
【私ならば「できる」といった「暗示」やアーファメーションを繰り返し、唱える事で、潜在意識へ沁み込ませる事】
【また、それ等は潜在意識に刺激を与え、視覚・聴覚・触覚の3つのサブリミナル効果があるとされる】
【このサブリミナルとは、潜在意識という意味合いの言葉である】
『――と」
う~ん……
とこれには、イチハ様達を推してみても、唸る思いだった。
――そして、ここで、心優しいイチハ様が。
『――これって、彼、作為的な罠にハマって、身をやつしていくんじゃなくて……!?』
とここで、アサヒさんがサクヤさんが頷き合い、
チラッ、そのヨーシキワーカの、今の様子を伺うものやったんや。
まぁ、トヨボシ君にLちゃんなんかは、先にそうした様子を見よってたようやけど……。
『……』『……』『……』『……』
★彡
【楽に決着! 裏表のコイン当てゲーム、勝者トラピスト】
――その頃、ヨーシキワーカ氏(偽名トラピスト氏)は、ここにくる際、変装してきているので、誰もが自分だとは気づいていなかった。
現在、名前を偽り、トラピストとして潜入中。
対戦相手は、彼女、クリスティ(偽名クレメンティーナ)だった。
『……』
『……』
その時、審判を請け負うバニーガール姿の彼女から、声をかけられてきて。
『それでは行きます! では、通算4戦目です! 両者! 裏! 表! 当ててください!』
『裏(う~ら)』
『お……、……表……』
ピィーン
と指で弾かれたコインが上にあがる。
それはトラピウスとクレメンティーナの頭上の上だった。
上げたのは、審判のバニーガール姿の彼女。
そのコインが、下に落ちてきて――それをカップを持ったバニーガールスーツの人が掬い取る。
カシャカシャ
とシェイクして、裏表がわからないようにして、
ドン
と机の上に置くのだった。
『紳士淑女の皆様お待たせしました』Ladies And Gentlemen(レディス・アンド・ジェントルメン)
『結果は如何に』What Is The Result(ホワット イズ ザ リザルト)!?』
【――このルールには、トラピスト氏から、特別ルールが設けられていた。それは……】
『どうする~? クレメンティーナさん? 考え直すなら今のうちだよぉ?』
『う~ん……』
【それは、コインを投じる前と、カップを開ける前とで、計2回、その裏表を当てるという、確率の問題だった】
【だが、気の強い彼女は、こう気が急いてしまい】
『……ッ、そのままでいいわ!』
『……』
チラッ
とトラピストは、そのバニーガール姿の顔色を伺うのだった。
『……』
『……』
その両の眼には、麗しきバニーガール姿の彼女が映し出されていて、
顔を良く見て、眉毛、鼻とか、口元、頬の筋周りの筋肉の弛緩さえ捉えるものだった。
そして、その手元を見て、指先1つの筋肉の弛緩さえ、捉えようとしていた。
で、出した答えは――
『――裏のままだ』
『『開封』Open(オープン)!』
カップが離れると――そこにあったのは、裏のコインだった。
『なっ……!?』
『クスッ』
ショックを受ける姿のクレメンティーナに。
余裕のトラピストの姿があったのだった。
『……ッ……ッッ』
クレメンティーナが、敗北を悟った瞬間だった。
『勝者! トラピスト氏です!』
オオオオオッ
5回戦勝負だった。3本取った方が勝ちという名目上のものだった。
トラピスト氏が、勝ったのは、1回戦、3回戦、4回戦であり、5回戦は無効試合(コールドゲーム)。
負けたクレメンティーナ氏が、勝ちを収めていたのは、2回戦だけだった。
これには、そんな彼女を推しても。
『……何で……!?』
とそんな呟きが漏れる思いだった。大層、ショックを受けた様子だった……。
それに対し、トラピスト氏は。
『フッ……フフッ……簡単なイカサマですよ。お嬢さん』
『えっ……!?』
審判を請け負うバニーガール姿の彼女は、チップの配当金を行うのだった。
「では、配当金は、トラピストさんが4分の3で、クレメンティーナさんが4分の1で、コインを支払います」
両者の掛け金が、バニーガールの手によって、動くのだった。
『い、イカサマって……!? 何!?』
『……』
『まさか、カジノの……その女の人と結託(グル)だったの!?』
『……』
黙ったままのトラピスト氏。
『……』
そこには呆ける姿のバニーガールがいたが。
クスッ……
と笑みを浮かべ、こう受け答えする。
『……何もやってません、違いますよ?』
『えっ!?』
『あたしは、何もしていません』
『えっ!? ……だって!? この人がイカサマだって!?」
そう、この人は、そう言った。あたしは、その人に対し、指をさすのだった。
それに対し、彼はこう告げる。
『先行と後攻、『どっちが有利』だと思う!? その配当金額は、決して正しいと言えるのか!?』
『え? え!? え!!?』
誠実にお答えするトラピスト氏。
それに対し、クレメンティーナは、しどろもどろの大混乱だった。
「クスッ……」
と笑うバニーガールの彼女。
『簡単な例だ! お嬢さん……あなたは、コインの裏表を当て、確率は2分の1だと思ったのだろう!?』
『そうよ!! 悪い――ィ!?』
『……イヤ、着眼点としては悪くはないが……。それが『数学の確率論』で言えば、少々間違っている』
『は……はぁ!? 数学の確率論……ど、どーゆう事!?』
『フフッ……まだまだ青いな』
『……説明して!!』
クレメンティーナ(あたし)が、そう声を荒げると。
彼は、もうあっさりと。
『いいよ』
『あっさりしてるわね……お兄さん……?』
『紙とペンを!』
『は~い!』
トラピスト氏は、それをお姉さんから受け取ると、「ありがとう」と告げ、
彼女はにっこりと微笑み、「どういたしまして」と受け答えするのだった。
俺は、サラサラ、とそれを書き出していく。
だいたいこんなものだ。
1.確率は2分の1から大別して、
2.先手側有利で、後手側不利……。
3.先に三勝した方が勝ちなら、先手側有利となり、
4.2分の1が、回数を経るごとに重なっていけば、勝利者側4分の3の勝率となり、敗者側は4分の1の勝率となる。
5.カジノ側は運営者である以上、またお客様に来てもらい、楽しんでもらう以上、配当金にも、そうした考慮を行っている。
6.多くのターン制のゲームでは、実に不平等で、先手側有利である為、何らかの処置を施している。
7.今回の場合は、特別ルールを敷いてて、1回のゲームで、コインの裏表を当てるもの。そう、コイントス前と、カップを開ける前の計2回だった。
8.これにより、不平等をできるだけ削ぐ狙いがある。
『――そーゆう事ォオオオオオ!?』
『そうだよ。要は確率論の話だ!』
『……』
(あたしは、今、どんな顔をしているんだろう? どんな顔をして、今この人を見ているんだろう!? しょ、勝負したい、もっと!!)
『……も、もう1回!?』
『いいよ! ……じゃあ、次は、……君に勝たせようかな?』
『!?』
そのお相手は、バニーガールの彼女だった。
トラピストさんは、彼女を勝たせようというのだ。
これには、あたしとしても。
『あら? 逃げるの!?』
『いやぁ……じゃあ、負けたら、さっきの配当金、4分の3をそのまま上げるよ』
『フ~ン……』
『その代わりと言っては何だが……。
さっき、君に見せた紙の例を、もっと視覚的にわかりやすくするためにも――』
『!』
コクリ
と頷き得たバニーガール姿の彼女は、そこから動き出して。
戻ってきた時には、ある箱のようなものを用意してくれたのだった――トンッ、トンッ、トンッ
『3つの箱……』
クレメンティーナ、彼女から、そんな呟きが漏れた。
『ルールは、簡単だ! 彼女には、3つの箱を用意してもらった』
『……』
(それが、この箱というわけね)
机の上には、3つの箱があった。
『確認のために、その箱を開けてもらって』
『は~い』
バニーガール姿の彼女は、その持ってきた3つの箱を順々に開けていく。
何も変哲もないが、違うのは、下には空間が空いていたものだった。何かを入れて、隠す類のものが。
『隠すのは、このコイン1枚だ!』
キラリ☆
と光るカジノのコイン。
『このコインを、隠す』
『フンフン』
『君達2人には、この隠したコインを当ててもらう』
『簡単じゃん! 確率は三分の一でしょ!?』
『フフフ』
『……』
タラリ……
と冷や汗が流れる。
そこへ、バニーガール姿の彼女が。
『ホントにそう思ってるの? あなた?』
『え……』
『だとしたら、小学生並みだわ』
『……』
あたしは、何気ないサービス嬢にバカにされたのだった……。
あたしは、その顔を彼に向けて。
『クスッ……さっきと何も変わらないよ。
ただ、1枚のコインが、確率51%ぐらいだとすると……。
この3つの箱(ボックス)を当てる確率が、変動するってだけさ! 約34%! ぐらいさ』
『そんなのおかしいでしょ!? 3つの箱を、均等に分けたら、33.3が3つ並びなって、0.1ぐらいしか余らないわよ! バカにしてんの!?』
これを聴いた2人は。
その顔を見合わせて、『ハァ……』と溜息をもらすのだった。
これには、クレメンティーナさんも、素っ頓狂の面持ちを浮かべてしまうのだった。呟き出た一言は、『え……』だった。
トラピストさんは、こう告げる。
『彼女にはABCの内、どれか1つを当ててもらい、
その後で、ワザとハズレの箱を、私が教えるというものはどうだ!?』
『え?』
『単純に3つの箱があって、私がその1つを除去するのだから……、残る2つ! そのどちらかが当たりという訳だ!』
『そっそんなの2分の1じゃないの!! バカにしてるの!?』
『クスッ……そんなにおっぱいが大きいのに、意外と心は小心者ね!』
クスクス
笑うバニーガール姿の彼女。
これには、カァ~~、と赤面する思いのクレメンティーナ(彼女)がいたのだった。
『ッ……』
『どうしますか!?』
『そっ、そんなの……の……乗ったるわよ!!』
ニッ
『決まりですね!』
★彡
【カジノ】
――そのトラピスト主題の箱の中に隠された、コインを当てるというゲームを見た、サクヤさん達は。
『………………ゲームってやがるッ!!』
不満を露にするのだった……。
次いで、その近くにいたアサヒさんが。
『こっちはお前のためにやってんだぞ!?』
不承不承を露にするのだった。
……だが、違うのはこの3人。
『……』『……』『……』
それは、イチハ様、トヨボシ、今も姿を隠しているLの3人だった。
(上手い、ゲームに誘った!?)
(このまま御兄さんに、クレメンティーナさんを任せよう)
(このまま、身内内に潜み、潜り出す感じで、そこから情報を聴き出したら、儲けものだしね!?)
☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんが、こう語る。
「――それは、ゲームを通じて、親近感を持たせるというものだったわ!」
これには、現在のスバル君を、Lちゃんを推しても。
「ゲーム……」
「を通じて……」
それに対して、サファイアリーさんが、こう語る。
「ええ、そうよ。
この時、2面性に分かれて、活動していたの。……そうよね? クリスティ……いいえ、クレメンティーナ?」
「……」
コクリ
と頷き得るクリスティさん。
彼女は、こう語るものだった。
「2面性だったの……。
イチハさんたちは、『その少女の情報と足取り』を、
ついでに、ヨーシキワーカさんを助けるためにも、『無実を明かし助ける目的』で、影ながら、活動していたの」
それを聞く事になるのは、スバル君とLちゃん。
「……」「……」
「あのトラピストさんは、クレメンティーナ……と名を偽ったあたしの懐に潜り込み、
その後ぐらいから、あたしを、陰ながら助け合う目的で、身の安全を確保しつつ」
チラッ
とサファイアリーさんとエメラルティさんを見て。
「……」「……」
「その娘を通して、何らかの情報を得る! 大きく分けて、この役割分担で陰ながら、動いていたそうよ」
「……目的は?」
「そうねぇ……。守護霊鳥チコアちゃんからの、報告例によれば――」
☆彡
――夢見渡りの時渡り。
並行世界線上のその先の未来の歴史を、高速で飛ぶ一羽の鳥がいた。
(ピー―ッ)
それは、ヨーシキワーカとチアキから頼まられた極秘任務だった。
バサッ
と翼を広げて飛ぶ守護霊鳥チコア。
その片目に有するのは、それぞれ、危機感知能力と夢見の力による、併せ業だった。
そして、そのもう間もなく――その出口から出ると、
そこに広がっていたのは――
ドンッ
粉々になった岩石だらけだった。
それも地球爆発時のドロドロになって、溶解してて、そこへ、急激に宇宙の冷気に冷やされた感じの。
(ピー―ッ……)
それは、最悪の未来だった……。
それは、地球が粉々になった姿だった……。
「――その先の未来で、最低、『3回は、地球が木っ端微塵になっていて、跡形もなくなっていて』、岩とかが、浮かんでいたそうよ」
これには、スバル君も、Lちゃんも。
「……へ……!?」
「跡形もなくなっていて……それも、3回も……?!」
「ええ、だから、
さすがに、3度目の正直ならぬ、4度目の正直ってやつで、もうこんな事が会っていて、
度なさっていた感じであっていて、いくらかその不毛な事態だから……」
フゥ……
とサファイアリーさんは、重い溜息を零し、こう語るものだったわ。
「そうなる歴史さえわかっていれば、その歴史の特異点のどこかで、介入していって、
いくらかその歴史の改変をした方がいいんじゃないかって!?
その正直な所、ここん処が想ってるの。
ホント、こんな事は、『悪い事』なんだけどね……。
全員そろって、『地獄行きは免れない』でしょうけどね……」
「……」
「でも、あんな未来になるよりは、いくらかそのマシな方だからね……。
だから、陰ながら、この時代に、『密偵』な感じで、着てくれていた子もいるわけよ。
その……ありがとうね……ってね。その向こうのあの人が言ってて」
「……」
ありがとう。
そう彼が、彼女が言ったのだ。
「でも、それも、切り札のカードは、ハッキング伝いの連中にやられていて、『いつも監視されていて』、
もう失敗してて、もうやられた跡だそうよ……」
「……」
「希望の芽は、か細くも細く、極細みたいなものでしょうね……。
遣わしてくれる子なんかがいれば、まだ、望みもあるんだけどね……。
それもないか、薄いかな……。
薄氷の上に、立たされたようなもんだし……」
「……」
「残念ながらね……。『時間切れ』の『疎遠上の別れ話』で、『3年を超過した時点』で、『もう失敗してた』の……ッッ」
「……」
職業訓練校時代、0年目。
ミシマさんに関わった年、1年目。
小説公開年、2年目。
領収書が見つかった年、3年目。
そして、事件解決年、4年目。
つまり、途中から連絡が取れなくなり、仲間達を通じて、迷惑が掛かると被るといけないので、
途中から、その連絡手段をすべて、打ち切った理由(わけ)だ。
……まぁ、物語の進行上、追々、話していく必要がある。
★彡
【カジノ】
【豪奢なセンスを持ったマダム】
「――ホホホホホッ! 御機嫌麗しゅうーっ!」
「!?」
一同、その人を眼に納め。
その人はこちらに、コッコッコッと歩み寄ってくるのだった。
【豪奢なセンスを持ったマダム:クリューソス アントス ハンゲショウ(黄金の花言葉でトカゲの尾)】
紫黒いドレスに身を包んだ貴婦人に見受けた。
時代を先取りした自己主張的な帽子に、そこから垂れ下がったレース状の黒いカーテン。その素顔は窺い難い。
ずんぐりむっくりな体形に沿うように、完全オーダーメイドのドレスに身を包んでいた。
目視で観察する限りでは、一般女性2人分ほどの体積がありそうな感じだった。
☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんが、こう語る。
「――それが、クリューソス アントス ハンゲショウと呼ばれ、後々、大いに関わっていくようになるの」
これには、アユミちゃんも。
「ハンゲショウって?」
それに対して、サファイアリーさんが、こう切り返してきて。
「名を偽っていたの!
まぁ、簡単に要約していけば、金とか黄金とかは、英語でMoney(マネー)、ギリシャ語で、Chrimata(クリマタ)と呼ばれていて。
さらに、ここで、アントスという花の意味合いもあって、
黄金の花、英語でGolden Flower(ゴールドフラワー)。ギリシャ語で、Chryso Louloudi(クリューソルルディ)
花言葉で縮めて、Chrimata(クリューソス)と呼称されているの」
「クリューソス」
「そうよ~! で、続いて、
ハンゲショウ花、方白草、トカゲの尾。『Saururus(ソーララス)』、
トカゲは、英語でLizard(リザード)、ギリシャ語でSavra(サブラ)。またはSauros(サウルス)とも呼ばれ。
尻尾は、英語でTail(テール)、ギリシャ語でOura(オウラ)で、
サウルスとオウラで、ソーララスと縮めて呼称していたの。
えーと……つまり、『クリューソス アントス ハンゲショウ』……かな?
つまり、日本語に要約すれば、『黄金の花言葉でトカゲの尾』……となっていたのよ」
「……」
【――大物の登場であった――」
★彡
【カジノ】
カツン、カツン、
段々と近づき歩み寄ってくる、豪奢なセンスを持ったマダム。
紳士淑女たちが、恐れおののくように、その道を開ける。
「……」
アサヒが。
「……」
サクヤが。
「……」
イチハが。
「……」
アストルとテラコルが。
「……」「……」
トヨボシとLが。
「……」「……」
その瞳に、彼女を捉える。
カツン
運命が邂逅する。
「……」
「……」「……」
――そして、トヨボシは。
(――何だこいつ……気配が明らかに違う……!?)
それは、思わぬ遭遇者だった――
☆彡
おまけ
【――その頃、遠く離れた銀河では――】
【スバル暗殺をもくろむ、某組織『アナトリア』】
大広間に呼び集められた信者たち。
壇上に上がったフードで身を包んだ彼女の名は、フォラダ。
【謎の組織アナトリア コードネーム:『牝馬』Forada(フォラダ)】
「――そう言えば、昔……」
「? どうかしたましたか? フォラダ隊長?」
「うむ、前フォラダ隊長が、確か負けた事が会ったな……」
「前、フォラダ隊長がですか?」
「うむ、事の経緯と経緯は、詳しくは何ともわからぬが……。
ヨーシキワーカに負けたとも、チルディアに負けたとも、愚痴っておったな……確か……」
「何かあっていたんですか?」
「うむ、片言で、ただ……負けた……とな」
これには、質問者の女も。
「……」
男連中も。
「……」
その他大勢も。
「……」
(それじゃ、何にもわかんないわよ?)
(((((片言じゃ、そりゃあ要領を得れんわ……。それじゃわからんわ(得れないわよ)(知れんて))))))
「……まぁ、過ぎた昔の話だ……」
TO BE CONTINUD……