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2進法から10進法へ、そして文字コードに変換するプロセスを行っているからこそ、学者の述べた説は逆説的に証明されているのではないだろうか。

 ここで疑問を呈する。コンピュータと人を繋ぐのもが、2進法でなかったとしたら。

 さらに、コンピュータが2進法を介さず、自然言語として理解し始めたらどうだろう。「言語」を数値化出来るか否かに対する結論は、2進法という枠組みを超えた時、不可能となってしまうのではと思う。

何より、人類が高度な言語能力を手にして以降、数え切れない言語が産まれては消失してきた。

それら一つ一つを証明しようとすることは、人間の寿命を考慮すると現実的ではない。

 際限なく続く円周率の数列は、パターンを繰り返さない。その非周期性を予測できないように、言語もまた似たような神秘性がある。

 この議論に終わりはない。それが私の結論である。

 私は言葉を大切にしている。自分の想いは、自分の言葉で伝えるべきだ。それなのに、現代人はAIに頼りすぎている。特に最近は、間違いを恐れて、機械に託す傾向が強い。

 人から聞いた知識を鵜呑みにするのではなく、試したり調べたりして、知識を自分のものにするよう努力すらしない。

人間が他の動物と一線を画すのは、「言語」によるコミュニケーションの進化が(いちじる)しかったからだと、私は考える。

 デバイスの通知音が鳴った。

<クレン、明日の読書会忘れないでね!>

 アイビーからのメッセージだった。

 そういえば、と思い出す。明日はネイサン・ニシタニの読書会に参加するんだった。明日というより、後9時間後くらい。時刻は午前2時を過ぎていた。

まだシャワーを浴びていないし、昼から何も口にしていない。ショートスリーパー体質ではないのだから、早く寝ないといけないのに。

 時間はいくらあっても足りない。ようやく、基本的なカナイ語が分かるようになってきた。

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