12
「底にいる人間は、蕾どころか芽を出さず終わる。お前は花を咲かせるんだ」そう言ってくる祖父のことが、あまり好きではなかった。
僕のために言ってくれたのだろうけど、学歴だけで他人を評価するところが嫌だった。彼の息子、つまり僕の父がうまく育たなかったから、僕に矛先を向けたとも取れた。
父も祖父と反りが合わなかったみたい。何が不満だったのか。僕からすれば、父は十分すごい人だと思う。
ただ、仕事人間だから滅多に家にいないし、サッカーの試合も応援しに来てくれなかった。思えば、来てくれなくて正解だった。
両親の出会いも、学校だったという。ブルームーンに上がっている、カップルの写真だったり、結婚報告だったりを目にすると不安になる。
元チームメイトの半部以上は、「彼女」という単語を使っていた。絶対結婚したいとか、すごく恋人が欲しいという気持ちではないけど、意識しているから余計に。
周りにとっての普通は、僕にとって違う。
僕はシュンと違って、誰とでも仲良くなれないし、容姿にも自信がない。
学校に通っていたなら、僕は目立たないグループにいて、シュンは人気者になっていたのだろう。
僕はこの時代に産まれてきてよかったと思っている。ヴァーチャル上では、自分の好きな自分になれるんだ。
だけどもし、意中の相手がリアルの姿を見たら、がっかりさせてしまうかもしれない。
シュンは「もっと自信を持って」と励ましてくれる。僕は、本当に良い友だちを持った。
読書会にシュンを誘ったのは、お礼のつもりだった。君のおかげで、新たな居場所ができたって伝えたい。
読書会で顔を合わせるメンバーは毎回変わるが、いつ参加しても終始穏やかに過ごせる。
映画鑑賞が趣味だって言っていた子も紹介したい。薄い桃色のショートヘアで、青い瞳の女の子。