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ストーリーも、役者の演技もどれも良かった。確かに、この映画は面白い。
他にどんな作品を撮っているのか気になって調べてみると、数々の代表作の中で『喧騒のディスパレーション』が目についた。
「シュンはこの映画観たことある?」
「いや、ないかな」
「これから観てみない?何だか面白そう」
第六感っていうとオーバーだけど、直感的に好きな作品かもしれないって思った。原作はネイサン・ニシタニ。僕はすぐに、彼の作品を読み漁った。サッカーしかやってこなかった僕にとって、彼が描く物語は新鮮だった。
ミステリー小説を読んだことがなかったから、という理由以外に、一筋縄では行かない男女の恋や絆の描写。複雑な関係を、シンプルな文章で表現されている。
新しい道が開けたような、僕に向かって爽やかな風が吹いたというか。シュンが「未開の地を探しに」って言ったのはある意味で実現した。
僕にもこんな才能が欲しかった。ネイサン・ニシタニ以上の、天才はいない。
ブルームンも使って彼のファンたちと繋がろうとした。共通の話題さえあれば、大丈夫。次第に仲間が増えていって、読書会の主催者と知り合い、さらにハマっていった。
分かり合える人がいるっていいな。ヴァーチャル上で友達や恋人を作ることは、普通のことだ。リアルで会うのはお互いの信頼を得てから。
ゲートがなくて、仮想化技術が黎明期から成長期に入っていた頃。ちょうど、僕の祖父が若かった時は、全く違った。
その時は、学校に各地から集まって、授業らや部活やらをやっていたらしい。もちろん、本名と素顔のまま。初恋や一生の友だちができる場所も、だいたい学校。
祖父は遊ぶ同級生を横目に、直向きに勉強してきた。そのおかげで、祖父はいい大学に入っていい仕事に就けて、老後は悠々自適な生活を送っていた。