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Friend 06 かわらぬままでいたい

迷いの森?裁きの森?そんな暗い森に迷い込み、審判である巨大な樹の下で試練に巻き込まれる少年。ぽみ以外の3人の妖精を捜せ・・・と。最後の最後で、審判に言い返そうとするのは・・・

 
挿絵



【裁きの森・審判の前】

審判:
少年は、人間と呼ぶには惜しい存在なのかもしれない。それがこの場を引き寄せたのであろう。

ぽみ:
何?どういうこと?

審判:
だが所詮は客・・・わしは信用できぬ。

少年:
・・・客なんかじゃない。

審判:
なぬ!?何を言うか!

少年は急に顔色を變えた。

少年:
朴は・・・客なんかじゃない。
ぽみとはともだち同士だ!でなければ、こんな・・・

ぽみ:
ぽ兄ちゃん・・・

審判:
ともだち同士・・・だと?たとえ、違う種族だとしてもか。

少年:
それは・・・

審判:
種族の違いを越えて、ともだちとして居られるのにふさわしいのか?

ぽみ:
わたしは・・・

審判:
ぽみは引っ込んでろ!これは少年の問題だ。

少年:
妖精・・・なんだよね?別に、羽があるのと時間魔法が使えること以外は、朴とは變わらない。たとえ小さくてもだよ。

審判:
そう言い切れるのか?

少年:
元の世界の腐り切った奴らよりずっといい。

ぽみ:
ぽ兄ちゃん・・・言ってたよね。みんなバラバラとか、親もダメダメだとか・・・

少年:
朴は・・・元の世界で誰にも受け入れてもらえなかった。好きなことをしていても、すぐにみんな消えていくし、すぐに壊される。朴のやりたいこと・・・全部消してしまうんだ。
けど、そんな朴を受け入れてくれたのが、ぽみなんだよ。何でもない自分だとしても、一緒にいてくれるなら・・・

ぽみ:
そんなに・・・

審判:
所詮、元の世界では、おまえもその愚か者の中にいたのであろう。
いずれヒトは成長し、心は汚れ、欲を滾らせて何かを支配する。そのようなものではないのか?たとえ今の少年が自ら言った通りの存在であったとしても、いつまでも今のままではいられないはずだ。

少年:
そ、それは・・・朴も・・・そうなるのかよ・・・ダメ親みたいに・・・

審判:
それでも、今が良いと言えるか?

少年:
それは・・・

審判:
いつまでも今のままでいたい。しかし、いさせてくれない。どうするつもりだ?

少年:
朴は・・・そんな・・・

ふみ:
それは流石に言い過ぎじゃんかい?

ぽみ:
ちょっと、ふみ!

少年:
朴だって・・・オトナになんてなれなくて済むなら、そうしたいよ。魔法か何かでも使って、そうできるなら。オトナなんて信用していない。なりたくないし関わりたくもない。
生まれ變われるのなら、生まれ變わりたいよ。

審判:
ほう・・・その想いか。しかし、叶わないとしたら?

少年:
朴にも分からないことはいっぱいある。けど、これから考える。朴が變わらなくてもいい方法を。みんなで考える!

審判:
それでおまえの惱みは解けるのか!

少年:
それに、たとえ見た目が變わっても、中身が變わらなければいい!

審判:
それを自分で受け入れられるとでも言うのか!そして、おまえもぽみを受け入れられるか!?

少年:
愚かでも何でもいい!初めから無理だと決め込んでいたら、それこそ何もできなくなる!ぽみも受け入れられる!朴はぽみを受け入れたんだから!

ぽみの夲質を理解し、審判にまで無茶な要求をしたが・・・

ぽみ:
ぽ兄ちゃん・・・そうだよね。ぽ兄ちゃんはぽ兄ちゃんのままでいい!
ぽふぽふ♪

眉間を軽く叩くぽみ。

ふみ:
その言葉に、間違いは無いな。うちも少年が氣に入ったぞ。

みみ:
變わらなくていいように、みんなで考えてあげたい。

少年:
みんな・・・!

審判:
まさか、3人に認められるとは・・・
んん・・・確かに想いは受け止めた。しかし、厳しい道だぞ・・・

少年:
けど、まだ終わっていないよね?あみは・・・

審判:
あみなら、そこにおるぞ。

あみ:
兄貴!どこ行ってたの!

少年:
それは朴の言うことだよ・・・

あみ:
とにかく、抜け出せた!見つかった!
あれ、この樹・・・

ぽみ:
審判よ!

審判:
これで4人揃ったな。良かろう。今から道を開ける。

ぽみ:
元に・・・戻ったの?森・・・

少年:
結局・・・何だったんだい?

審判:
ありのままの心を持った者だけが、この森を抜けられる。
しかし、少年はかなり汚れていた。だからわざと迷い道を作った。おまえが自分自身に戻れるようにするためにな。戻れなければ、この森の闇に封じ込めるか、消していた。

少年:
それって・・・

審判:
まだ「何も信じられない」という邪念を持っていたのだ。だから、ぽみたちと友として居られるのか、迷いを持っていた。概念のあり過ぎる少年と、概念の少ない妖精。分かり合えるのか・・・とな。

少年:
概念の無い・・・存在・・・

ぽみ:
誰にでも違いってあるの。けど、それはヒトの世界も同じでしょwどうして爭ってるのかな。

少年:
それってもしかして、周りが爭いを作る奴ばかりだから?

審判:
そこが難しいところだな。違いがあるのは普通だ。しかし、違いの名の下に爭いを生む奴は、違いを認めていないのに同じではないのか?

少年:
それは・・・

ふみ:
爭いを生む考え方はあり得ないってこと。話の次元が違う。そう言いたいんじゃないのかい?

少年:
そうだね。妖精たちはそんな残酷な考え方しない。朴には分かる。

審判:
その答えが正しいかどうかは、自分で見極めれば良い。

少年:
そうだね。ぽみたちのこと、もっと知りたい。

ぽみ:
わたしも、ぽ兄ちゃんの心の中、もっと知りたい!

少年:
違いはあってもいいけど、それで嘘をついたり大事なものを失うのなら、違いを認めないのと變わらない。そんな奴は受け入れられない。そうだ、それなんだ。

あみ:
みんな同じじゃつまらない!趣味も好みも違うんだよ!けど、心ある者は根は同じ!だから、兄貴はあたしたちを受け入れた!

みみ:
分かる。根は同じ。葉が違うだけ。

ぽみ:
同じ音階でも音そのものは違うように・・・

少年:
ぽみとあみでも違うんだよね。

ぽみ:
分かる?w

審判:
いいだろう。どっちに向かうのかね?

ぽみ:
行こうと思っていた、緑の大きな街!ぽ兄ちゃんが行きたいって言ってる。

審判:
宜しい。ぽみ、少年を案内してやれ。

こうして、試練は終わった。


【裁きの森の道】

少年:
まさか、こんなことになるとはね・・・

ぽみ:
けど、言いたいこと言えたんじゃない?ぽふぽふ♪

ふみ:
よくあんなに思いつくよね・・・ぽみはおともだち・・・か。

少年:
それにしても、ぽみ・・・あの森、夲当に空けたままでいいの?ぽみがいないと、いろいろ不安なんじゃ・・・

ぽみ:
いつものことだって言ってるでしょ!
森にはいつでも代わりがいるし、慣れてるよ!それに、不安なんて持ちたくない。なんとかできるって!

みみ:
元凶はあみ。いつもぽみを振り回してる。

あみ:
もういいから!!

ふみ:
行くとしよう。

ぽみの案内で森を抜け出し、街へ向かう。


【裁きの森を抜けた後の道】

確かに、緑緑した街らしき何かが見えてきた。


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これで今回のお話は終わりです。
殆ど会話で終わってしまいましたねw

成長の概念について、少し疑問に思ったことがある筆者でした。「個性」「違い」についても、考えさせられることが多いですね。

次回はついに街に着きます。

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