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64.ブチキレたら、危険な打ち上げ

 巨人が右腕を振り上げた。
 また私たちを叩くつもりだ。
 左腕はキャプチャーに突き刺したまま。
 さっきのに味を占めたんだ。
 突き刺した腕を通して、スムーズに打撃を通す!

「な、めるなあ」
 ああっ。言いなれてないから、変な声になった。
 それでも、ウイークエンダーの空挺ユニットを使って、へたり込んだ体勢から立ち上がる。
 全身のブースターも、全開にする。
 両拳を後ろに引く。
 向かうのは、巨人が自分からヒビを入れた、両足!
 しまった!
 この距離は、ショックダイルを狩った時より短い!
 スピードが乗らないかもしれない。
 かまうもんか!
「なめるなぁ!! 」
 こんどはカッコ良く言えた!
 ウイークエンダーをはねあげる!
 前にかけだす!
 スピードをのせるだけのせた2つの拳を、叩きつける!

 ヒビが、一気に広がるのが見えた。
 巨人の炎の黒い足が、輪郭を失う。
 キャプチャーに阻まれたまま。
 直後、振動と爆音がひびいた。
 押し戻される!
「敵目標の足が、爆発しました」
 はーちゃん?
「両足に過剰なエネルギーをため込んだ上、先ほどのパンチで完全に破壊されたようです」

 急激に、バランスがくずれていく。
 ふんばれないまま。
 そうだ、キャプチャーの力でスピードを落とせば・・・・・・と思ったら。
 視界から、キャプチャーごしだから見えていた黒が消えた。
 しまった!
 キャプチャーから追いだされた!
 じぶんの考えの遅さに嫌になる。
 とっさにイメージする。
 手でキャプチャーをつかみとる。
 手に痛みが走る。
 機体はスピードを落としていく。
 成功だ!
 だけどまだ足りない!
 空挺ユニットはウイークエンダーがバランスを失うと自動で姿勢制御してくれるけど、間に合うわけがない。
 このままだと、背中から落ちる!

 そう言えば、レスラーだったか、フットボール選手だったか。
 背中から倒れて、脊ずい、背骨をおって、寝たきりになった人がいたらしい。
 原因は、イスに座ろうとしたら、イスを外されたと言う、下らないイタズラだったと思う。

 私が思い浮かべたことは、安菜とはーちゃんの無事。

 不意に、空が見えた。
 相変わらずの雨空。
 なんだろう。
 黒い煙が、空に伸び上がってる。

 その、はるか下で、灰色のとがったものが飛んでいった。
 ゴー! と巨大なジェットの轟音。
 七星。
 暗号世界からやって来た戦闘機が、2機。
 2機の七星は私たちを通りすぎると、すぐもどってきた。
 信じられないほどの急カーブで!
 地面ギリギリという超低空飛行。
 そのままの速度で、形がかわっていく。
 スマートな人型が、一気に近づいてくる!
 空力的には弱点にしかならないはずなのに、地面にもぶつからず、完了させた。
 スゴい腕だよ!
 そのまま、ウイークエンダーにぶつかった。
 ウイークエンダーの落ちるのが、止まった。
『うさぎ! 安菜! それと、えーと』
 無線ごしに聞こえる、女の人の声だ。
 いつも聴いている、わたしのアイドルの、真脇 達美さん?! 
『それと、はーちゃん?! 無事か?! 』
 男の人だ。
 鷲矢 武志さんだ。
「「「はい! 」」」
『無事で良かった』
 先輩たちは、七星の人型ロボットの力で、ウイークエンダーを支えてくれたんだ!
「ありがとうございます!
 でも、何でこんなところに?! 」
『単なる出稼ぎ!
 コイツのテストパイロットでね』
 そう言えば、今日はグロリオススメは臨時休業だった。
 最強のサイボーグにはそんなことがあるんだ。
『そしたら、こっちに呼ばれてね。
 海の方で手間取ってた。
 遅くなってごめんね』
 達美さんの頭を下げる姿が目に浮かぶ。

「いえ。悪いのはアイツらです! 」
 安菜の言う通りです。
 そう言えば、アイツらはどこ?

 恐ろしいほどの振動はつづいてる。
 キャプチャーの中に、空洞ができて、黒い炎が空に吹きだしていた。
 まるで噴水のように。
 その炎の中に巨人は、いない。
 見上げたら、いた。
 夕方に向かって暗くなった空に、魔法炎が弧を書いてる。
 失った足の爆発で吹き飛んだ、黒い巨人の上半身だ。

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