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明言はされていない。一石を投じる人もいない。
内側にいる人たちのほとんどは、ゲートを作ったことによる恩恵を受けているから。
俺もその一人。
ゲートが作られる前の時代の詳細は、生きていなかったから分からない。
だけど、少なくとも、凶悪犯罪者たちがここにいないと思うだけで、安心して過ごすことが出来ている。
それに、内側の世界は
厳密に言うと、仮想空間の中に理想郷を創り出そうとしている段階にある。
肉体を地上に残し、精神を仮想空間へ完全に移行するプロジェクトだ。
現実世界での生活と差異がないよう、意識や五感など全てを移行する。
一時的にではなく、一生暮らせるように。
病気もしないし肉体に危害が加えられない限り、不死身になれる。
最新鋭のハプティックフィードバック技術も欠かさない。
さらに、許可された人しか出入りできないよう管理し、苦手な人やものは排除することすら可能になれば。
好きなものにだけ囲まれて、全てが思い通りになる。
まさに理想郷。そこで暮らせるのなら、誰だって手放したくない。
くだらない理由で過ちを犯せば、再度手に入れることはほぼ不可能になる。
追い出されるくらいなら、飛び降りる。そう考える人もいるのかな。
生死観について考えたところで、無駄に終わる。
死が遠すぎて、漠然とした恐怖に怯えている内は、自分はまだ大丈夫だと思ってしまう。
それに、母が若くして亡くなった分、長生きするんだって決めた。
倍に膨れ上がった群衆の輪に、次から次へ人が吸い込まれていく。
その流れに逆いながら、俺は何を食べようか考えている。