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プロローグ∶さよなら異世界

 突然だが今俺はとても大きなパーティ会場に居る、きらびやかな調度品、異国の料理、ナイトドレスやタキシードで着飾った人々、流れる音楽は生演奏、今まで一般市民としての人生じゃ絶対に縁の無い場所だ。

 その会場で人当たりをしてしまった俺はバルコニーで夜風に涼んでいた。
(こっちに喚ばれて5年か……頑張ったよな)

 5年前はゴブリン一体倒して吐いてた俺が【叛魔《はんま》軍(人類と魔王に叛逆した軍)】の首魁である邪神を倒せるなんてなぁ…

(まぁ、そんな戦いの日々も終わりか……)

 元々決まっていた事だが神様より邪神討伐後は元の世界に返す約束だった。
 問題があるとしたら、めちゃくちゃ重大な心残りがある…

「この世界の人めっちゃ顔が良んだよ……」

 面食いと言われたらそうなんだが、顔面偏差値90点以上しかいない世界で5年も生きたら目が肥えちまうよ…それに俺は元から美人は好きだし。

「はぁ~彼女ほしかったなぁ〜。まぁ神様との約束で、邪神倒したら強制送還だし必要以上に人とは関わらなかったんだよなぁ〜」

(それなら娼婦なり買えばよかったが、パーティメンバーにめちゃくちゃ可愛いくて好みの子が居たからってのもある)

 パーティメンバーは勇者である俺、聖女、聖騎士、賢者、シーフの男3女2のペアだ。

 聖女様は元々この国のお姫様でめちゃくちゃ可愛い、正直一目惚れだったしこの人のいる世界なら死んでも救ってやろうと思った。

 向こうも多分好意はあったと思うが…旅の最後の方は、超絶イケメンの聖騎士と夜な夜などっかに行ってたみたいだったから元から勝ち目なんか無かったんだけどね!くっそアイツ聖騎士じゃ無くて性騎士だったよ…羨ましい。

 もう一人の女の子である賢者はめっちゃ巨乳で童顔のエルフ…エロフだった、命救ったり彼女の故郷救ってたら、猫のように懐かれて膝上に乗られたり、夜一緒に寝たり(添い寝)した。まぁ姫様と同じ様にイケメン浅黒金髪(湘南海岸でよく見る陽キャ)のシーフと夜な夜な街に消えてた、つまり勝ち目は無かった、毎晩波乗りパーティかよ…羨ましい。
 しかもパーティメンバーは城に帰って来てから一切顔も合わせずに解散しそれっきりだ。

 そんな悲しき過去を振り返って居たらバルコニーに続く扉が開かれた音がした。
 そして規則正しく最低限の足音を鳴らしながら近付いてくる。

(あぁ…この足音はユキか…)

 ユキとはこちらの世界で5年前に助けた少女、こちらの世界に来て初めて体験した魔物の人間領大侵攻の際、魔物によって襲われた村の生き残りだ。名前等の一部記憶が欠落していた為、髪色が雪のように白銀色をしていた事もあり名付けた。以降彼女は身寄りも無かったので城でメイド見習いとして雇って貰い、現在は立派なメイドになっている。度々城に寄ると専属としてお世話してくれてた、虚ろな目をしていて表情の変わらない氷のような態度だけどね。

「ユウキ様……国王様がお探しです………」

 虚ろな目でこちらを見ながら淡々と声をかけてくる。

「わかった、ユキありが「それでは失礼します」……とう」

 そんな氷のような態度で頭を下げユキはそそくさと立ち去る。やっぱり嫌われてるのかな、嫌われてるんだろうな、両親を目の前で喰われ助けた後は後ろ盾もないのに貴族子女ばかり居る王城のメイドに強制的にされてだもんなぁ…仕方ない。
 
 とりあえずバルコニーから戻り貴賓席の中心に居る王様に寄っていく。

「すみませんシド様、お待たせしました」

「おお、ユウキよ待ってたぞ!」

 威厳のある髭を携えた初老の男性が居た、シルヴェーラ・ドゥーデール・リーベルンシュタインこの国の王様だ。

 最初の頃翻訳が慣れてなくて名前のシとドが聞き取れた頃から呼んでいる愛称だ。(本人が大喜びで許可した)

「お待たせして申し訳ありません」

「いやいや、こちらこそ楽しんでいる所、すまないな今日は送還の日なのに娘は顔も見せないで…」

「先程まで人酔いしてバルコニーにて休んでおりましたので、それよりエアリスの体調、まだ悪いんですよね、なら仕方ないですよ。」

 そう、パーティメンバーとはもう7日も会っていなかった。

 帰って来てからは皆一様に体調が悪くなり部屋から出ようともしなかった、医者や治療師等は会っているので心配は心配だが俺には強い回復魔法が使えるわけじゃないので出来ることが無い。

(それに今更会って未練を増やしたくないし…)

「それに褒賞も特には与えられず申し訳ない」

「神様よりこちらの世界のものは持ち帰れないと言われちゃいましたからね、仕方ないです、最後に美味しい物いっぱい食べられましたし城下の散策も楽しめましたから。それにユキの事もありがとうございます!」

「それは任せておけ、悪い様にはさせないさ」

 そう談笑していると12時を告げる時計の音が鳴り響いた。

 徐々に体が薄くなっていく……時間が来たようだ。

 シド様が立ち上がり声を張る。
「皆の者! 我等が世界を救いし勇者のユウキが帰還する! 拍手と感謝の言葉で送り出そう!」

 その言葉により静かだった会場が万雷の拍手と感謝の言葉が飛んでくる。
 その拍手送られ意識は途絶えた。

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