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<今日潜ろうぜー>
<いや、俺はパス>
<またあいつのストーカー?飽きないよな、ホント>
「十部くーん」
さらに、彼の上司のたるんだ喋り方が、拍車をかける。
「昨日も話したけどー、また苦情が来てるんだよねー。この前の開放日に来た女の子たち、使えないってよー」
「はぁ…」
「もっと肉つきよくないとー。いくら可愛くてもさぁ」
「ろくな食糧渡さないからじゃないんですか?とにかく、私の役割は果たしました」
十部はきっぱりと言った。早く彼女のところへ行かなくてはならないのに。逐一GPS信号の場所を確認する。
しかし、上司は「だけどさぁ…」とクドクド続ける。
この上司は、裏でパトロンたちに幼児売春を斡旋しており、彼自身も小児性愛者の傾向がある。
—ストレスでどうかなりそうだ
老いぼれた、清潔感を微塵も感じさせない男との会話を、強引に終わらせた。
明日も難癖を付けてくるに違いない。だが、今はそれどころじゃない。
十部は地図を開き、タクシーに飛び乗った。
—桜坂さん…どうして嘘をついたんだ
長いため息をつく。桜坂クレンを食事に誘ったが、断られた。
「彼氏がいる」と言っていたが、十部は信じていない。
桜坂がプライベートで男性といる場面を、未だ目撃したことがないからだ。
たとえいたとしても、桜坂に相応しい男かどうか見極めなければ。
十部は、撮り溜めた大量の写真を見返した。
休日のほとんどを、彼女の私生活の調査に費やした成果として。
家の住所を突き止めた。好きな食べ物も把握した。よく通う店も。後は、交友関係を詰めなければ。
臆面もなく、誇らしげにな気分になった。
周りからストーカー呼ばわりされているが、彼に自覚はない。
これはストーカーではない。一種の愛情表現だと思っている。
振り向いてくれない、桜坂が悪いのだ。