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ひたすら謝るしかない。透日は、茉璃にメッセージを送ろうとした時、「お兄ちゃん!」と聞き慣れた声がした。
顔を上げると、彼女が笑顔で駆け寄って来た。
「茉璃!どうしてここが分かったの?」
「ハルお兄ちゃんに教えてもらったの」
彼には場所を伝えていなかったが、何が起こっても驚かない。
「そうなんだ。だけど、よく一人でここまで…」
「歩いてきたんだよ。偉いでしょ?」
透日は目を丸くした。彼の中では、幼いの茉璃の姿のまま、止まっていたから。
彼の中に残っているのは、体が弱くて、手足が細くて小柄な少女の影。
「あの…、本当にごめん。すぐ戻るとか言って。君のことを放りだして…」
「楽しかった?」
「え?」
茉璃は目を見て、透日の返事を待っている。
「あ、うん。最初はね…。だけど…中々上手くいかないね」
「そっか…。ハルお兄ちゃんがね、お腹すいたって。早く帰ろう」
「うん。帰ろう」
茉璃の手を取って、茜色が差す方へ向かった。透日はまたしても、その光から哀愁を感じた。
今日が終わろうとしている。ついでに、今日起きた出来事も忘れてしまいたい。
「お兄ちゃんに、あの女の人は合わないよ。私、すぐに分かった」
「どうして?」
「理由は分からないけど…。もっといい人がいるのにって思ったの。だから、落ち込まないで」
「大丈夫、落ち込んでないよ。ありがとう」
途中でハルとも合流した。「どうだった?」と訊かれ、「最初だけ楽しかった」と話すと、それっきりこの話題を広げることはしなかった。
ハルとくだらない話をして、茉璃は傍らで笑っている。
生きている喜びを少しだけ見出だせるこの空間は、内側だろうと外側だろうと、関係ない。
自分の生きるべき場所は、二人がいる場所だ。