第7話 信じるか信じないかに付き合い年月関係なし
「夢?一応聞こうか……どんな内容?」
「私が……嫉妬に狂って、魔女に頼んでリイナを呪い殺す夢」
その発言を聞いても、クロウは顔色を変えることはなかったが、多少興味は引いたのだろうか……片方の眉毛をぴくりと動かした。
私のことはこの際どう思われても構わない。
リイナのことを守ることさえできればそれで。
「その魔女が、ピンクの髪の子供だった。魔女は、最初聖女がわからなくて、間違えて候補者を襲ってしまうの。だから、聖女の儀式の日にリイナに呪いをかけに神殿に行くの」
「その話を信じるなら、君がその魔女に頼んで、実行しようとしてるってことになるけど?」
私はそのクロウの冷たい声に少し体を震わせるけど、その後首を大きく横に振って、否定する。
「違う、私は夢を見て、リイナへの嫉妬を捨てたの……私はリイナのことを貶めようなんて思ってない。」
「まぁ、そうだろうね。あそこまで過保護にしてる君が、リイナを呪うとは思えない。でも、だとしたらおかしいじゃないか、どうして君は何もしてないのに、魔女はリイナを襲うんだ?」
クロウは私を疑いはしなかった。
でも、やはり矛盾は突かれる。
「だから焦ってるの!夢とは正反対の道を選んだのに……なのに同じことが起きてるから!多分私以外の誰かが……このままだと、リイナは呪われて死ぬ!ピンクの髪の子供に!」
私は、今自分の持っている情報を全てクロウにぶつけた。
クロウはその話を聞くと、天を仰いだ。
その状況が数秒続くと、もう一度私の方を見て言葉を繋げる。
「……君は聖女のいとこだ。それを考慮して、血筋ということで予知夢の魔法が発動した可能性はないことはない。」
「だったら!」
「だけど、予知夢になってない。状況は同じで、プリスト令嬢が襲われて、魔女が出てきたとしても、肝心の黒幕が違うじゃないか。君がリイナを狙ってない以上、君が見た夢は予知夢どころか正夢にすら当てはまらない」
「でも本当なの!ピンクの髪の子供の魔女は実在した!さっきこの目で見た!リイナを襲うのも事実かもしれない!」
「じゃあ仮に予知夢だとしてどうする?黒幕は違う、目的不明、魔女の行動も把握できていない……これじゃ参考にならない。それとも予知夢を全面受け入れて、君を拘束する?」
そう言われて私は項垂れる。
そんなことはわかってる。
だから黙ってたんじゃない。
もういい……騎士は動かないクロウは信じてくれない。
フィリックは監視をしない。
リイナは勝手に動く。
だったら、私も好きにする!誰もリイナを守ってくれないなら私がリイナを守る!
私はもう一度手に拳を作ると、顔をパッとあげて、鬼の形相でクロウを見て、こう言った。
「クロウが追いかけてくれないなら、私が一人で行くから!」
そう言って翻し、彼女たちを追おうと体を翻したのだけれど……
その直後、クロウに首根っこを掴まれてしまう。
「なんのために予定を変更して、君をここまで連れてきたと思ってるの。わがままは大概にしなさい、神殿に行くよ」
「ちょ、離して……離しなさいよ……クロウのバカっ!」
そう反論するも、首根っこを捕まえられて、ずるずると引きずられて元来た道を戻られて仕舞えば、私にできることは何もなかった。
もう、これでドレスの首が伸びたら、弁償してもらうんだから!
心の中でそんなことを毒づかれていると知らないクロウは、私を引っ張って馬を待たせている道まで、伯爵令嬢である私を、雑に引きずっていくのだった。