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第6話 魔女と黒幕の影



それからしばらく道を進んでいると、途中、曲がり角が見つかった。

そこから話し声が聞こえてくる。





「話が じゃない」





「けい げんじゅ むり」





なんの話をしてるかわからない。

ただ……ひとつだけわかることがある。



2人とも女性のだ。



私は向こうに気が付かれないように、壁から少しだけ顔を出し、こっそり曲がり角の先の様子を見た。





「……最中に?」



「みんなの………呪われれば……」





ピンクの髪の……間違いないロベリアだ……!



もう一人は?あれが黒幕?



だめ……もう一人もローブを着ている上に、こちらに背を向けている……顔はおろか体型も見えない……。





「失敗は許されないから」





そう声が聞こえた時……





「ルナ!」



私の後を追いかけてきたクロウが、まあまあ大きな声で私の名前を呼ぶ。

当然その声は壁のある狭い裏路地では響いてしまい、2人が気づいてしまう。



そして、振り向くことなく、足早にこの場をさってしまった。





「クロウ…!!大きな声出さないでよ!逃げられたじゃない!」





「なんの話?」





なんのことだかわからないというような、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情でこちらを見る。

でも、詳しく説明している暇はない。



このままでは黒幕もロベリアも野放しになり、リイナの身に危険が迫る。



だから簡潔になんの話かと、何をして欲しいかの説明をする。





「令嬢を襲った犯人よ!やっぱりリイナのこと狙ってる!追いかけて!」





「追いかけてって……言われても……誰もいないけど」





私はそう言われて、もう一度曲がり道の通路をのぞく。

確かにそこにはもう2人の姿はなかった。





「神殿に急いで行きたいんでしょ?早く行こう。」





そう言ってクロウは私の手首をつかんだけど、私はブンッと腕を振ってその手を振り払う。





「でもさっき、リイナを襲う計画話してる人がいたの!ほっとけない!誰かが追いかけなきゃ!」





「君の思い違いじゃなくて?」





「絶対に違う!リイナを狙う犯行計画だった!」





「ふーん……」





クロウは疑いの眼差しを私に向け、私の顔をジロジロと見つめる。

そしてこう言葉をつなげた。





「そこまでいうなら、信じてあげてもいいけど?」





「ほんとに?」





「僕が君の話を聞いて、本当に『そうだ』と思えることが一つでもあればね。今すぐにでも探し出すよ。だからちゃんと答えて、その犯行計画って具体的にどんなものなの?」





「えっと……」





これは困った……私は自分の知ってる情報と聞こえてきたワードで、そうだってピンときただけだから、詳しい会話は聞いてない……。



というより、距離が少し遠いせいで少ししか言葉が聞こえなかったのだ。



でも、それでもちゃんと伝えないと、クロウは動いてくれない。

だから必死に頭を回転させて、聞こえてきたワードを絞り出した。





「最中に………呪われれば……失敗は許さないって」





これが限界だ。

でも誰かを呪おうとしているのは確かで、何かの最中を狙うなんて……

今日のビックイベントは聖女の儀式しかない。

十分な情報だと思う。





「絶対にリイナのこと狙ってくる!だから!」





「儀式の最中だってはっきり聞いたの?」





「それは……でも!」





「確固たる証拠がないと騎士は動かせない」





私の反論にピシャリとクロウは言い切った。

やはり勢いだけではこれ以上は動いてくれない。



いや、でも押し切るしか私にできることはない。





「でも、元聖女候補だったプリスト令嬢を襲った犯人がいたのよ!?仮にリイナのこと狙ってなくても、追いかけるのに値するでしょ?」





「どうして言い切れるの?何で君が犯人の特徴なんか知ってるの?」





「それは...」





「何度も言ったはずだよ?あの噂で『子供』とは聞いたけど『ピンクの髪』なんて特徴一言も聞こえなかったって。いい加減ちゃんと教えてくれないと、僕だって動けないし、他の騎士たちに協力を仰げない。」





私は手に力を入れて拳を強く握る。



本当にそうだ……説得するためには材料が足りなさすぎる。

でも、だからと言って動かないわけにはいかない。





「……根拠を言ったら……まともに話を聞いてくれる?」





「内容による。」





真剣な顔をしてクロウはそういった。



一か八かだ……

この世界には魔法は存在する。



でも、生まれ変わりまでは信じられていない。

前世の話をして、信じてもらえる可能性は低い。



だったら、別の言い方で説明するしかない。



笑われるかもしれないけれど、彼は昔馴染みの一人だ、耳を傾けてくれるかもしれない。



可能性に賭けよう。





「……昔……夢……見たの。」





私は覚悟を決めてぽつりとそう告げた。

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