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この人達は、一体何をしているのだろう。何を喜んでいるのだろう。
「おい、サム。大丈夫か?ハハ、やっぱ怖気づいたか?」
「…君たちは、これを面白いって思っているの?」
「まぁね。だって、頭に当たるとスカッとするじゃん。それに、高得点も狙えるし」
たかがゲーム。いや、たかがじゃない。悪趣味すぎる。
彼らがターゲットにしているのは、外側の住民だ。
内側の人間が、自分たちの存在をどう捉えているのか、一瞬で悟った。
吐き気がした。一刻も早くここを離れたい。
「言っておくけど、クーデターを起こそうとしているのは、あいつらだから」露華が言う。
「だからって…何でこんなこと…」
「もし、また戦争が起こったとしても、私は絶対安全な場所にいる。だけど、備えておいて損はないと思っている。これは、予行練習だよ」
「ベル…」
「ま、外にいる人達の存在意義なんて、たかが知れてるけどね」
「どういう意味?」
「内側にも、病人が住める場所があるけど、彼らの世話なんて誰もやりたがらない。皆、自分の人生の方が大事だから、全責任を外側の人達に押し付ける。つまり、何においても犠牲になるのは、私達じゃないってこと」
「外側の人だから、仕方ないとでも?」
「サム、忘れたのか?やつらはモンスターだ。危害を加える犯罪者や病人達だぞ。罪悪感なく出来るだろう」
またエースが割り込んできた。彼らの話を訊いている内に、頭痛とめまいが始まった。
外側で産まれたというだけで、僕たちは最初から異常者なのか。
同情も、理解も出来ない。このシステムを開発した経緯、平気で利用する露華たちに対して。
透日が育った場所は劣悪だったが、人を傷つけてもいいとは思わなかった。