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「サム、向こうに扉があるでしょ?そこから行きたいステージにワープするの」

露華は指で示す。透日は彼女に顔を向けた。

「ねぇ、血飛沫って?もしかして、誰かを襲うつもり?」

「もう、サムったら。安心して。行けば分かる」

「行く前に説明してもらいたい」

 もし、この行為がハルと茉璃にも迷惑が及ぶような行為だったら、と考えてしまう。

今度ばかりは、簡単に頷く訳にはいかなかった。

「平気さ。相手は人間じゃない。たかがゲームだろ」

横からエースが言う。

「そうだよ。みんなやってるし、危険なことじゃない。それとも、何か理由でもあるの?」

「いや…別に…。君たちがそう言うなら行くよ…」

 頑なになりすぎても危険だ。透日は、後悔しながら扉をくぐった。
しかし、すぐに次の後悔がやって来ることになる。

―え、ここって…

 眼下には、見慣れた風景があった。殺伐としていて、重苦しくて、光が届かない場所。

そこを一望できる高台に、透日たちはいた。
そして、露華とエースの両手には、スコープ付きのライフルが握れている。

透日はようやく理解した。

「よし!早速始めるか。ラッキーボーイ、俺がお手本を見せてやるよ」

「ちょ、ちょっと待って。相手は人間じゃないって…」

「そうだよ。本物の人間じゃないって意味。ヴァーチャルなんだから、死にはしない」

 エースが話し終わると同時に、パァーンと、乾いた轟音が空を切った。

頭部が崩れ、血まみれになった肉片と胴体が、地面に叩きつけられる。その人間の姿が、透日の視界に入ってきた。

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