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 背後からの水滴の落ちる音で、透日は目を開いた。

両手を動かしてみる。感覚は正常に働いているようで、ひとまず安堵した。

―これがベルの言っていた噴水かな?

 彼女の言った通り、簡単に電脳空間へ接続できた。

室内にいたはずなのに、上には青空があって、噴水を中心とする広場を囲うように、いくつもの扉が並んでいる。

周辺に集まっている人の多さに圧倒されながら、スペースを探して露華を待つ。

「サム」

遠目に見えた露華が、手を振って近づいてくる。

「ベル!…と、あの…」

露華は見知らぬ男を連れてきた。

「やあ!初めまして、ラッキーボーイ」

 男は握手を求めてきた。透日は訝しげながらも「こちらこそ、初めまして」とあいさつをして応じた。

「俺はエース。君はサムだね。さっき彼女から聞いたよ」

「はい、そうです。よろしくお願いします」

「ハハッ、真面目なんだね。にしても、ベルが男と一緒に来るなんて。驚いたよ」

露華とエースは顔を合わせて微笑む。
透日には会話の意図が読み取れなかった。

「付き合ってどれくらい?長かったりするの?」

エースは透日に顔を近づけて訊く。

「ちょっと。プライベートに干渉してくるのはマナー違反だよ」

露華が間髪入れず言った。

「あぁ、ごめんごめん」エースは軽薄に返す。
エースとの関係は?なぜ一緒にいるのか?目の前のどうでもいい疑問が、透日の心にまとわりつく。

「ところで、血飛沫(ちしぶき)ありで行くの?サムは平気かしら」

「なしじゃつまらないしね。すぐに慣れるさ」

「それもそうだね」

透日の意見は求められずに話が進む。

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