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「彼が創ったからこそ、響いてくるものがあるのに。…デイヴィットに限った話しじゃないけどね。創造者はいつだって偉大だよ。だけど、私達は次第に、創造者の偉大さを忘れてしまう。真実を知る人たちはごくわずかで、彼らが世界の中心にいることはないんでしょうね」
「ベルはすごいね。僕には考えつかないよ」
「大げさだよ。さ、ご飯食べ終わったから、潜りに行かない?私、この上に部屋持ってるの」
「潜る…。う、うん。そうしよう」
透日は露華の隙を見て、言葉の意味を調べた。
―クレイドルって何だろう。仮想空間って…。なんだか恐いな
透日はなるべく平常に装ったが、彼女は自分が外側の人間である仕草を、気にも留めないのだろう。
デイヴットについて語っている時の、露華は好きだ。
後、思い立ったらすぐ行動する一面も。
しかし、リスクを背負ってまで、ずっと一緒にいたいとはなっていない。
―次で最後にして、茉璃を迎えに帰らないと…
二人は最上階直通エレベータに乗って、露華の部屋に向かった。
「ベル、あの…。僕、使ったことないんだよね。その…クレイドル」
「そうだったの?まぁ、ただ座ってるだけでいいから。簡単だよ」
「そっか…。ならよかった」
「あ、接続出来たら噴水の前にいてよね。私から探すから」
「うん、分かった」
深く息を吐いて、腰を落とす。鼓動の速さは変わらない。
案内アナウンスが流れて間もなく、透日の意識が薄れていった。