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確固たる目印があれば、後悔のない人生を進める。人々の足並みも揃い、争いもなくなるのかもしれない。

もしくは、"言葉”と”感情”が人の中から消失しさえすれば。

「答えたくなかったら、言わなくていいけど…。さっき悪口が送られてくるって。どうして自分のことだって思うの?」
透日は重く口を開いた。

「どうしてって…。私のアカウントに、直接メッセージが来るんだから」

「そっか…。ごめん、当たり前のこと聞いて…」

「いいよ別に。だけどそんな質問、サムが初めてだよ。ほんと、変わってるね」

「そうだね。ベルに会って、僕はみんなと違うんだって、思ったよ。今まで生きていた時間に、僕は何をしていたのだろうって」

「私もそう。人生に意味なんてないんだよ。産まれてきた理由が、見つからないんだから」

 透日は初めて、露華を身近に感じた。人を見下すような発言をして離れていった気持ちが、急激に彼女へ戻ってきた。

「母親は私を産んでいないの。代理出産ってやつ。自分で産むのが嫌なら、産まなきゃいいのに。父親は平気で不倫を続けるし…。妹が産まれた時思ったの。本当にあの二人の子どもなのかって」

 露華の言葉に、透日は共感出来なかった。彼自身の母親に対して、憎しみの感情など持っていない。

存在しない人に憎しみを抱いても虚しくなるだけだし、親が違う子供がいることなど特別なことではなかった。

ただ、産まれてきた喜びが分からない、という感情があることが意外に思えた。

「事実がどうであれ、私には関係ないんだけどね」

結局、二度目の星空をないがしろにしてしまった。プラネタリウムを出て車に戻る。今度お互い、歩幅を合わせて。

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