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露華との待ち合わせ場所に到着した。
「ねぇ、友達ってどんな人?」
「僕と同じ、デイヴィット・ディックのことが好きで、優しい人だよ」
「ふーん…」
茉璃は壁に寄りかかる。まるで興味が無さそうな反応だった。
露華に連絡をして数分。近くに車が停車した。流線的なデザインが黒光りする高級車だった。扉が開くと、彼女が手を振り降りてくる。
透日は自然と笑顔になった。
「サム、いきなり誘ってごめんね」
「全然構わないよ。あ、こっちは妹のサリー。ほら、挨拶は?」
透日は茉璃の顔をのぞく。
「…こんにちは…」
聞き取れるか、聞き取れないくらいの声量で言う。
「緊張しているみたい…。気にしないで」
「気を使わなくていいよ。サリーちゃん、はじめまして。ベルって呼んでいいから」
「…」茉璃は地面に向かってわずかに頷いた。
「ちゃんと返事をしないと。もしかして、どこか具合でも悪いの?」
「別に平気だよ…」
―まだ早かったかな…
透日は傍らでヒヤヒヤしていた。
来る途中、会う友達が女の人だと話すと「ホテルに戻っちゃだめ?」と訊いてきたが、せっかくだからと無理やり連れてきてしまった。
「気持ち分かるよ。私も子どもの頃、似たような感じだったもの。それより私ね、行きたいところがあるの。さ、乗って」露華が二人を車へ招く。
「うん…ありがとう」
まだ始まったばかりだ。遊んでいく内に仲良くなっているだろうと、前向きに考えることにした。
洗礼された内装のデザインに、肘掛けのとオットマンが付いたシート。透日でも、この車は他と違うということが分かった。
「サムは普段何をしているの?」
露華はネットをいじりながら言う。
「えっと…。普通に…働いているよ。皆と一緒で…」
ハルにアドバイスを訊くんだった。透日は焦ったが、露華の質問に深い意味はなさそうだった。
「へぇ。立派だね。私と同じくらいなのに」
その声に抑揚はない。