バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

41

 露華との待ち合わせ場所に到着した。

「ねぇ、友達ってどんな人?」

「僕と同じ、デイヴィット・ディックのことが好きで、優しい人だよ」

「ふーん…」

茉璃は壁に寄りかかる。まるで興味が無さそうな反応だった。

露華に連絡をして数分。近くに車が停車した。流線的なデザインが黒光りする高級車だった。扉が開くと、彼女が手を振り降りてくる。

透日は自然と笑顔になった。

「サム、いきなり誘ってごめんね」

「全然構わないよ。あ、こっちは妹のサリー。ほら、挨拶は?」
透日は茉璃の顔をのぞく。

「…こんにちは…」
聞き取れるか、聞き取れないくらいの声量で言う。

「緊張しているみたい…。気にしないで」
「気を使わなくていいよ。サリーちゃん、はじめまして。ベルって呼んでいいから」

「…」茉璃は地面に向かってわずかに頷いた。

「ちゃんと返事をしないと。もしかして、どこか具合でも悪いの?」

「別に平気だよ…」

―まだ早かったかな…

 透日は傍らでヒヤヒヤしていた。
来る途中、会う友達が女の人だと話すと「ホテルに戻っちゃだめ?」と訊いてきたが、せっかくだからと無理やり連れてきてしまった。

「気持ち分かるよ。私も子どもの頃、似たような感じだったもの。それより私ね、行きたいところがあるの。さ、乗って」露華が二人を車へ招く。

「うん…ありがとう」
まだ始まったばかりだ。遊んでいく内に仲良くなっているだろうと、前向きに考えることにした。

 洗礼された内装のデザインに、肘掛けのとオットマンが付いたシート。透日でも、この車は他と違うということが分かった。

「サムは普段何をしているの?」
露華はネットをいじりながら言う。

「えっと…。普通に…働いているよ。皆と一緒で…」
ハルにアドバイスを訊くんだった。透日は焦ったが、露華の質問に深い意味はなさそうだった。

「へぇ。立派だね。私と同じくらいなのに」
その声に抑揚はない。

しおり