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「ブルームーンが危険だなんて。まぁ、使い方によってはだけど。でも、みんなやってるし、こっちの方が便利だからサムも使おうよ」
「そうなんだ…。けど…どうしようかな」
—ハルに訊いてみようかな?
「ねぇ、どうするの?」
「え、えっと…。じゃあせっかくだから…」
ここで彼女との交流の機会が途絶えるのは、避けたいという気持ちが強かった。
―ハルは反対するだろうけど…
透日はブルームーンのアカウトを登録した。
それだけなのに、急激に距離が縮んだような気がした。
「いつでも連絡して」
「うん、ありがとう」
露華との共通点は、デイヴィッド・ディックが好きだということと、妹がいるということ。
それ以外は正反対に思えた。彼女は内側の、透日は外側の人間。それに、ハルと同じでコミュニケーションと取ることに慣れている。
酒は苦手だとは言っているが、露華は次のカクテルを嗜たしなんでいる様子。
「ねぇ、今度どこかに行かない?」
「え、どこに?」
「それをこれから決めるんでしょう?」
「あぁ、そうか。ごめん」急な誘いに戸惑った。
自分が偽の身分を使って内側にいることを、悟られてはいけない。が、まず透日が心配したのは、茉璃のことだっ。「えっと、嬉しいけど、妹が…まだ小さいし」
「それなら、一緒に来れば?」意外な返事がすぐに来た。
「…本当に?君はそれでもいいの?」
「別に構わないよ。妹さんを大切にしているんだね。素敵」
今まで言われたことがない、その言葉の意味は分からなかったが、褒めてくれているのだろうと表情から判断した。
再び拍手が起こった。
飲み物を取りに行くと言ってから、かなり時間が経っている。
「ごめん、戻らないと」そう言って露華の方を向くと、彼女は大きくため息をついた。
「え?」
「あ、ごめん。あなたに対してじゃないから。それより、何か言った?」
「うん、そろそろ帰らないとって…」
「もう帰るの?まだまだこれからなのに」
「そうかもしれないけど…。えっと、僕たち親がいなくて。余計に…」