28
透日がドアノブに手をかけようとする前に、扉が開いた。
「お兄ちゃん達、外で何しているの?」茉璃が怪訝な顔をのぞかせる。
「あ、ただいま。ちょっとね…色々と…」
「色々…?」
「雑談していたって意味だよ」
「何でもいいけど、家に入らないの?」
「今入ろうとしていたところ」
「茉璃ちゃん、調子戻ってきたね。顔色も良くなった」
「うん、もうすっかり元気になったよ。ありがとう」
茉璃はにかむようしてハルに返事をする。
「…なんか、ハルにだけ優しくなってない?」
「そんなことないよ。いつも通りだよ」
ハルは二人の会話に混じることなく、ただ見守っていた。
それに気づいた茉璃は、無邪気な声でハルを呼ぶ。「ここ、座って。食べよ」
夜になっても冷めない気温によって、食欲は奪われた。しかし、食べるしかない。出来るだけ栄養を蓄えていないと、向こう側と違って救護してくれる人はいない。
「透日、ずっと気になっていたんですけど、あれなんですか?」
ハルが部屋の隅の方を指差す。
「ラジオって言うらしい。音楽とか、ニュースとか流れてたけど、もう壊れてて」