バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

26

「内側にいれば何でも手に入ると思ったけど、そうでもないんだね…」

「人によりますよ。資源や食糧は、上位数%の金持達に牛耳られてるから、こっちはおこぼれをもらうしかないというか」

「そっか…」

「向こうの世界に夢を見過ぎている人にとっては、肩透かしな感じですね」

「僕はそんなことなかったよ。とても楽しかったし、期待はずれなんかじゃなかった」

「それはよかったです。まぁどこに行こうが、いつか飽きがきて、結局空ばかり見あげるようになってしまう。人間の性って言うのかな」

「ハルは色んなこと知っててすごいね」

「そんなことないですよ。けど、ありがとうございます」

 家に着くまで会話は途切れることなく続いた。
いい友達が出来て、夢が叶って、これ以上何も求めない。その気持ちを保っていられるほど、都合よく出来ていない。

 ハルはマンションの階段を登る、透日の背中を見つめる。

今のところ、興味はハル自身に向いていないように思えた。
とはいえ、透日はなぜ自分が外側へ来たのか、気になってはいるのだろう。透日たちがハルの過去を知る日は、そう遠くない。

しおり