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たくさんのピースが、無駄なく嵌っていくような美しさもある。
彼が作曲として名声を馳せたのは、露華が産まれてくる前だった。
世代を超えても色褪せることなく、時には命を救うこともできる音楽の力は、やはり偉大だと思う。
露華が向かったのは、場違いにグラアンドピアノが設置されている、あのスタジアムだった。
かつて、音楽とスポーツが盛んだった街の名残らしい。ピアノの前には珍しく聴衆がいた。たった一人の聴衆。
演奏されている曲は、偶然にも露華の好きな曲。
この人は自分のセンスを理解してくれる。そう思って話しかけてみた。
「ねぇ、あなた」
反応がない。私のことを無視するなんて。露華は少し苛ついてもう一度言った。「ねぇったら!」
「はい、何でしょう?」
彼の第一印象は、根暗で真面目、つまらない。
見当違いだったかもしれないが、たまには遊んであげるのもいいかもしれない、と思った。ちょうどゲームをやり尽くして、飽きていた。
彼女がいてもいなくても関係ない。露華にとって、恋愛などくだらない遊びだ。ハンナの彼氏だって、すぐに別れるに決まっている。