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露華からは、理想の人生を軽々と生きているように見えた。
憎かった。同性としても、自分にないものを全部持っている彼女が。
電脳世界へ入ってしまえば、いくらか孤独は癒やされる。
友達と呼んでいる人たちは、自分の素性を一切知らない。離れたい時に離れて、必要になったら協力し合う。
クレイドルの中の音声が「接続中」から「ネットワークを確立しました」という音声に切り替わる。
接続が成功した。ここからは、意識も体も仮想空間へ委ねられる。
大きな噴水の周りには、多くのユーザが集まっていた。しかし、いつもパーティーを組んでいる仲間が見当たらない。
露華たちも、この噴水の前を集合場所とし、そこから各ゲームステージを選ぶようにしている。
流石に長時間やり過ぎたか。もう少し探してみようか、とも思ったが休憩を挟みたかったため、接続を切った。
露華は再びクレイドルから出る。
ハンナが来なければ、潜らずゆっくりするつもりだった。
「少しは外に出て散歩してみたら?」
ハンナは再びコップにオレンジジュースを注ぎ、その言葉と共に飲み込んだ。
『革命』を作った作曲家は、露華の中で唯一尊敬している人物だ。
彼の音楽を例えるなら、まっすぐな線。スッと胸に響いてきて、ずっと寄り添ってくれる。