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「そ、そうなんだ…。お詳しいですね」
「結構有名な曲だと思うけど?」
「あー…メロディは聴いたことはあるような…」
「あなた、変わってるって言われない?」
「い、いや…特には」
「そう…。あなたもピアノ好きなの?」
「ま、まぁ…」
彼女の丸くて大きい目が透日を見る。リアルな姿を想像することは出来ないけど、今の容姿と変わらない可愛いらしい人なんだと、錯覚させる。
透日はなぜ話しかけられたのか分からないまま、会話を続けた。
「音楽って不思議よね。歌なら、歌手の表現力や歌詞を聞くことによって、感動したり勇気づけられたりする。ピアノにはそれがない。けど同じように感動できる」
「うん…、そうだね。僕もそう思う」
初めて話す内側の人が、同じ感性を持っているなんて。
今朝のドキドキとはまた違った高揚感。透日は顔が赤くなるのを感じた。
彼女はピアノを弾いたことがあるのかな、他にどんな曲を聴くのかな。せっかくだから仲良くなりたい。
透日は小さい声で「あ、あの…」と話しかける。彼女はもう一度、透日の方を向いた。目を合わせることができなかった。
透日が言葉を言いかけたとき、耳元に通知音が鳴った。UNIONにハルからのメッセージが届いた。