13
透日はトイレへの矢印を確認しながら進む。
会場の外にあったため、少し歩くことになった。
―大丈夫とは言ったけど、戻る時不安だな…
いざとなれば、ハルに迎えに来てもらおうかと目印になるものを探していると、透日の耳元にピアノの音色が届いた。ラジオで聴いた、あの音と一緒だ。
もしかして、と透日は入り口とは反対方向に走る。
そこには写真で見たのと同じ、光沢のある黒いグランドピアノが弦を鳴らしていた。
弾き手はいない。自動で鍵盤が動いている。
―キレイな音。心が浄化させるようだ
ホ長調の繊細なメロディに身を任せていると、すぐ横に女性が並んだ。
「ねぇ、あなた」
誰に話しかけているのか分からず、透日は聞こえないふりをした。
するともう一度、「ねえったら」と言ってきて腕を叩く。
「あ、はい!何でしょう…」
栗色の長髪に白のブラウスに白のスキニー姿の彼女は「この曲のタイトル知ってる?」と透日に微笑んだ。
「あ、いや、分からない…です」
「『革命』、それがこの曲の名前」